
貸家を考える
ホームオーナーの資金術
コロナウィルスによって世界経済が疲弊している中、
国の施策も単純な給付金から、
ようやく事業者への家賃補償にまで及び始めています。
家賃負担は収入が減っている世帯には深刻な問題です。
これを機会にして、逆に家賃を取れるオーナーの視点から、
貸家のことを考えてみましょう。
食費と家賃
コロナウィルスによる自粛の中、
世界中の経済も止まり、戸惑っている人が多勢出ています。
何よりも収入が閉ざされ、生活にも困っている世帯があり、
その中でもシングルマザーが良く取り上げられています。
各国でも様々な支援策を講じて、
国民の生活を守ろうとしています。
日本では世界最大級の予算を投じ、
単純な給付金から、
今では事業者への家賃補償に及び始めています。
社会全体の活動が止まっている時にも、
絶対に必要とされるのは食費です。
たとえ自粛で家にこもっていても、
人は食べなければ生きていけません。
どんなに企業の支援をし従業員の雇用を守っても、
守りきれない人たちは生まれるものです。
事業者によって状況も違う収入の補償よりも、
食費に困らない施策が最も基本だと思います。
その点では、定額給付金は3ヶ月分の食費を
国が与えてくれていると思えば、
間違いなく必要不可欠な施策であったと思います。
食費に困るところまで至っていない人には、
給付金の価値は違って見えているのかも知れませんが、
10万円分の食費に救われている人は、たくさんいるはずです。
その食費と同等に、大きな課題となっているのが家賃の負担です。
特に自粛をして店を締めている事業者にとっては、
収入が閉ざされているにもかかわらず、
家賃の負担だけは大きくのしかかってきます。
定額給付金で食いつなぐことはできたとしても、
家賃を払わなければ、アフターコロナで
事業を継続することは無理かもしれません。
国も主に事業者の家賃に対する支援策に取り組んでいます。
ここでふと、もし自分が賃貸オーナーであったら、
どうかと想像してみてください・・・
貸家という事業
これまでにないコロナウィルスという災厄が訪れ、
世界中の経済が止まるほどの事態となっています。
先にも書いた通り、世の中には収入が途絶え
食費にも困る人たちが出ています。
もしかしたら、自分が賃貸している店子も同様かもしれません。
しかし、空間を貸して使用している状況は変わらず、
賃貸契約も有効です。
世界の経済が止まろうと、全く別世界で、
家賃を支払ってもらうことは当然のことだと思われます。
貸家という事業は、
もしかしたらウィズコロナもテレワークも関係なく、
安泰な事業なのかもしれません。
もちろん、家賃が入らなければ、困ることにもなります。
たとえば負債があれば、返済する費用も工面しなければなりません。
その他に、維持するために必要な費用もあります。
でもそれは、家を建てて住宅ローンを抱えている人たちと同じ悩みです。
もっとも単純な発想では、経済が止まってしまった数か月分、
返済期間を伸ばせば回収できないこともありません。
貸家であれば、店子がいなくなってしまわない限り、
職を失うこともなく、収入減を奪われることもありません。
また、店子が移り変わることは、日常でも起こりうることです。
貸家という事業は、これほど経済的にも強い事業であるということです。
利回り
住宅ローンを組むのであれば、最も大事なポイントは金利です。
たとえば、消費税10%は大きな負担となりますが、
ローン金利なら、わずか0.5%ほど金利が上がると
総支払額が10%相当増えます。
いかに金利動向が大事であるということです。
同じように、貸家事業を考える時には、
利回り抜きでは見当もできません。
そして金利と似た複利計算で大きな差となる側面があります。
利回りは、かけた投資に対して、
どれだけの収益を上げることができるのかという目安です。
もちろん、貸家を営むのに、自分が損をしてまで
住んでもらおうと考えるオーナーはありません。
どれだけ利率良く、投資を回収できるかが
事業としての成否を決めています。
この利回りのメドは、
5%程度と決めているオーナーがほとんどです。
フランスの経済学者であるトマ・ピケティが記した『21世紀の資本』でも、
利回りと同じ意味を持つ資産家の資本収益率は、
歴史的にも5%であるとしています。
東京などの地下を含めた価格の高いところでは、
3%台で考えなければならないこともあるようですが、
まずは5%をクリアすることが事業化の目安です。
この年5%の利回りで事業を運営することを、
金利と同じように複利で計算してみます。
たとえば、15年で約2倍となります。

2倍になるということは、
投資した金額を取り戻した上で、
同等の資産が自己のものになったということです。
そして15年目以降は、さらに純粋な利益を得ることができます。
手持ちの資金を運用することを考えれば、
預金をしておくよりもずっと有利な運用術です。
特に近年続いている超低利金利時代では、その差は顕著です。
現在の一般的な預金金利0.010%で、
同じように約2倍になるまでの複利計算してみます。

なんと、7000年も銀行に預けておかなければ、ならないのです。
自分が生きているかどうかのレベルどころか、
人類や地球がどうなっているのかも分からない話です。
もし資産を持っているのであれば、銀行に預けるのではなく、
運用するというのが資産家の基本的な考えになります。
減価償却
さらに貸家という事業においては、
減価償却という税制のメリットがあります。
不動産資産の中で、土地は経年によって劣化するものではありません。
一方、建物や特に設備機器などは使えなくなる時がくると考え、
投資した金額分を償却しているものとして計上できるのです。
たとえば、仮に2000万円相当の木造の貸家であれば、
耐用年数は22年間と仮定され、次のような計算となります。

この金額が、所得から減算されます。
さらに、設備機器の寿命が短いことを分けて計算したり、
定率法という当初に償却金額が高くなる計算をしたりすれば、
もっと大きな減価償却経費を計上できます。
それだけ、経理上では収入が少ないとみなされるのです。
所得が大きく税率が高ければ高いほど、節税効果を期待できます。
同じことが自分が住む家にも適用できれば良いと思いますが、
居住している家には減価償却は認められていません。
居住用の資産では、住宅ローン減税があり、年末残高の1%が対象です。

一部は返済して残額も減っていますので、
17~8万円ほどになり、減価償却と比べると雲泥の差です。
しかし、減価償却との大きな違いは、
所得である課税対象額への控除ではなく、
「税額控除」であるということです。
たとえば、税率が20%の人であれば、90万円近くとなります。
それ以上に、この計算の時の年間返済額は、
およそ69万円ですから返済額の
およそ4分の1を返してくれているようなものです。
あるいは、年間返済額69万円のうちの利子分が20万円弱ですから、
住宅ローン控除によって国が利子を
補助してくれていると考えることもできます。
しかも住宅ローン控除は、土地を含めたローンを組めば、
土地の取得費も対象となります。
貸家の場合は、この住宅ローン控除を
受けることはできませんが、
オーナーは利回りで稼いだ資金に加えて、
減価償却のメリットを活かして貸家の経営を行っているのです。
住宅ローン減税が10年か13年であるのに対して、
減価償却期間は長く、ほぼ金額を償却することができます。
日本の貸家
これだけ優遇されている貸家は、
どれくらい建てられているのでしょうか。
1年間に建てられている戸数は、以下のグラフのようになります。

注文住宅や分譲住宅を抑えて、
じつは貸家がいちばん多く建てられているのです。
そのように考えると、日本には貸家があふれてしまいそうに思えます。
ところが、日本にストックされている住宅戸数は、以下のようになります。

注文住宅も分譲住宅は済んでしまえば同じ戸建てとなります。
それにしても、一目の通り貸家は戸建てに比べて、
ずっと少なくなります。
貸家はストックにはなっていないということです。
この2つのデータを見れば、
貸家は短い期間で建替えられていることが想像できます。
約15年で元金を回収して、さらに稼ぎ、
減価償却による節税効果が効かなくなったら、
次の計画を進めた方が良いと資本家が判断しているのです。
しかも、日本の貸家事情は、
住まい手にとって決して良い環境とはいえません。
最も単純な、家の広さを比較してみるとわかります。

日本は、欧米各国に比べても、
格段に狭い家になっています。
驚くことは、戸建ての面積はフランスやドイツと遜色がなく、
イギリスよりも広く、日本の貸家だけが、極端に狭いのです。
狭くても高い家賃を払ってくれる人が日本にはたくさんいて、
せっせと家賃を払ってくれます。
そして15年で元手を回収し、
しかも節税効果まであるのが貸家の事業ということです。
しかも、コロナウィルスのような、
世界的な経済危機が来ても、とりあえず家賃収入は無くなりません。
資本家であれば取り組まないのは、
損失でしかないと考えるのも当然のことです。
資本家への道
こうして貸家のことがわかると改めて
自分の現状を考えることができます。
もし、今、貸家に住んでいるのであれば、
これまで書いてきたような資本家であるオーナーの資本増強に、
協力しているようなものです。
家賃は決して返ってくることはなく、
オーナーの懐に着実にストックされていきます。
もし、住宅ローンを抱えて返済しながら、
自分の資産を確保したのであれば、
それは銀行金利よりも高い利率で貯金しているようなものです。
さすがに15年の利回りとはいきませんが、
たとえば35年という住宅ローン期間で返済するのは、
その間の家賃を支払っていないことを考えれば、
銀行預金とは比較にならないほどの高利率での運用といえます。
自分で貸家を建てて、最も信頼できる自分に
貸していると考えれば良いのです。
さらに発送を広げると、
自分の家と同時に2連戸の住宅を建て、
低金利の住宅ローンを活用し、
1戸に住みながら1戸を貸家にする手もあります。
建設費も抑えられ、応分の住宅ローン減税と
減価償却の節税も利用できます。
もちろん家の管理も、身近にできます。
折しも2020年6月12日、
『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』が、
施行されました。
欧米並みの貸家面積を提供すれば、
限られているとはいえ可能性は低くはありません。
家を建てることだけでも十分ですが、
この国で有利となる資本家への道へのヒントになるかもしれません。
