「おもてなし」の家

「おもてなし」の家

来客の空間/客間考

 

・来客をどこで迎えるか?
・日本人のもてなし感
・来客のある家

 

家を新しくする時には、誰でも家族の幸せを願っているものです。

その家族も、大きな社会の一員であり、

家族それぞれに他人とのつきあいがあります。

時には家族外の人を家に迎えることもあれば、

自然と人が寄りついて集まる家にもなります。

客間としての住まいを考えてみました。

 

🏡家族のための住まい

 

結婚をした。子どもが生まれた。孫が生まれた。

こうした家族構成の変化の折に、今住んでいる住まいを見直し、

新しい住まいを考えるきっかけになることが多いようです。

これまでとは違う将来の生活スタイルもイメージされて、

それにふさわしい住まいが求められます。

 

その意味では、住まいが家族のためにあることは、

間違いのないことでしょう。

日本の古典である『古事記』では、

住まいの文字に「巣」が当てられています。

「巣」はまさしく、鳥の巣の象形文字です。

つまり「巣まい」とは、家族が育ち成長する場としての

役割を願っている言葉でもあるのです。

 

一方、幸せな家族像を語る時には、

家族だけが暮らしているシーンだけではなく、

人が寄り集まってくる明るい家庭のシーンが語られることも多いようです。

たしかに逆に、人が寄りつかない家を想像してみれば、

そこには幸せそうな家庭像は見えないかもしれません。

 

それを考えれば、住まいは家族のためにあることはもちろんのこと、

その家を訪れる客人のためにもあると考えられます。

人が寄り、集まる家とはどんな家なのでしょうか。

 

🏡人が寄る家

 

では現実的に、来客を迎えている家庭は、

どれくらいあるものなのでしょうか。

おそらく、家庭によって大きく違うはずです。

また、来客があらかじめあるものと考えれば、

家のつくりも違うかもしれません。

家を新築した553軒の家庭に調査したデータでは、

およそ4軒に1軒が来客があると答えています。

 

友人が来て、食事やお酒を楽しむ21.4%
盆や正月には、親戚や友人が来る 23.4%
時々、宿泊客がある28.6%

 

これらは、それぞれ独立した質問ですが、

似たような割合になっています。

家を新築して1年目の家庭のデータだからこそと考えれば、

少し多めに現れていると考えられます。

しかし、決して少ないともいえません。

日本の住まいでは、このような来客のために、

多目的室である和室を用意する習慣がありました。

 

しかし、その和室も近年はあまり求められなくなっています。

このデータの中には、その傾向も読み取れます。

 

来客はリビングで対応する80.5%
来客はダイニングで対応する40.9%

 

つまり、わざわざ客間は設けなくても、

リビングが多目的の用途をこなし、

来客の受入場所となっているようです。

もう少し詳しく見ると、盆正月に親戚が来る家庭では、

高齢者との同居も想定され、

和室を冠婚葬祭用として設けている傾向が強くなります。

 

和室の有無を含めて、親戚が来るのか、

友人が来るのか想定される来客も違うことが考えられます。

リビングで来客を迎えるのは、客間とは違い、

ちょっとフランクに人を迎え入れているイメージです。

かといって、欧米人が日常的に開くホームパーティのような来客が

日本でも浸透しているとは想像しにくいことです。

日本人のもてなし感を考えると、

人を迎える家とはどんな家なのでしょうか。

 

🏡日本人のもてなし感

 

2020年の東京オリンピック決定のプレゼンテーションで、

日本人の「おもてなし」の心は世界中に知らされました。

じつは日本の伝統家屋の中にも、それは明確に表されてきました。

 

「貴族ではなく一般庶民住宅に、

日常と特別の場合の接客空間を用意した家構えは、

世界の住文化の中でも特徴的」

 

このように書き記したのは、

日本の民家研究の第一人者である宮沢智士先生です。

『冠婚葬祭への備え』の小文にあります。

迎賓館のような、賓客を迎えるために建造されたものではなく、

農家や町家などの庶民が暮らす家にも

人を迎えることが浸透していたのです。

その代表格は、和室にある床の間です。

 

欧米の暖炉と比較されることもありますが、扱い方は似ていても、

それを使うシーンを想像するとまったく別のものです。

床の間は日常の「ケ」よりも、客人や「ハレ」の用途につくられています。

じつは玄関も同様です。

一般的な古民家では、家人は土間や広縁から出入りしていました。

 

これらの部位とは別に分けて、

わざわざ玄関をつくり客人用の出入り口としていました。

それは門にも通じていて、どれだけの賓客とのつきあいがあるかが、

その家の格を表すことにもなっていました。

さらに数寄屋建築で競うようにして建てられた茶室も、

考えてみれば来客のためだけの建築物です。

 

門があり、待合があり、雪隠を案内して茶室に入るまで、

禅を通じた接客スタイルの様式として研ぎすまされました。

これが和室として近代住宅まで引き継がれています。

そして、庭を眺めて最も良い場所につくられます。

一方では、住む人よりも来客ばかりを大切にする見栄主義の家であると、

批判する歴史家もいますが、たしかに日本ほど、

自分の住む家に来客を想定している国はないでしょう。

 

だからこそ、日本の家はどこかに来客のことを

考えておくことがあっても不思議ではありません。

そして少なくとも、こうした「おもてなし」の気持ちが、

家の使い方やつくり方に、影響を与えていることも充分に考えられます。

そのためには、前例のデータの中から、

現実に「友人が来て食事やお酒を楽しむ」ことがある家庭と

すべての家庭との差から、

顕著に現れているポイントを見比べて傾向を探してみました。

 

来客のある家庭のライフイメージ

 

夫婦だけでお茶や食事を楽しむ
すべての家庭50.6%
来客のある家庭61.3%

 

季節に合わせて室内を変える
すべての家庭 38.4%
来客のある家庭 48.6%

 

庭やバルコニーで読書やお茶・食事を楽しむ
すべての家庭 23.0% 
来客のある家庭 36.0%

 

寝室でお茶やお酒を楽しむ
すべての家庭 12.9% 
来客のある家庭 19.8% 

 

たとえば、上のような項目で傾向が見えます。

決して客を迎える時だけが、ハレの瞬間ではありません。

日常的な生活の中で、そしていつも顔を合わせている夫婦の間でも、

楽しみの時間を持とうとしています。

逆に、こうした日常活動ができる家族だからこそ、

人が寄りつく家になっていると考えられます。

また、さらに家族に関する要件にも傾向が表れます。

 

週に4回以上は家族揃って夕食をとる

すべての家庭 52.5%
来客のある家庭 65.8%

子どもの友達がよく来る
すべての家庭 50.6%
来客のある家庭 58.6%

主寝室の広さは子ども部屋の2倍以上ある
すべての家庭 19.1%
来客のある家庭 29.7%

 

人が寄りつく家庭では、子どもとの関係も深く、

そして親と同じように、子どもの友達も集まってくる傾向が読みとれます。

また、最後の項目は興味を引く内容です。

子ども部屋よりも夫婦が過ごす部屋を、

大切にしてしっかりとつくっている家庭です。

 

この家の主人が夫婦であることを、理解していることがうかがえます。

先に書いた『古事記』の巣まいも、

単に子ども用の家をつくることではありません。

家族の核となる夫婦が睦まじいからこそ、

子どもも友達を呼び、そして人が寄る家庭になっているのです。

 

🏡来客のための空間

 

こんな幸せな家族像を理想とするためには、

どんな空間を持てば良いのでしょうか。

寄りつく人との関係も変わりつつあり、

昔ながらの和室の客間ではなさそうです。

先のデータでもあげた通り、すでに接客の場は、

リビングやダイニングが普通になってきています。

 

たとえば大勢の人で囲めるような、

ビッグテーブルをLDKに置くのはひとつの答えです。

家族の数以上の椅子があれば、自然と人が寄りつく気運が高まります。

もうひとつの答えは、LDKの片隅に、

ちょっと空間が限られた小間を設けることです。

オーディオルームやホームシアターなど、

ちょっとした趣味を生かせる空間にしておくのも良いでしょう。

 

こうした小間が、客人をもてなす空間として有効に働くことは、

欧米人のホームパーティの成功例と、

日本人の特性から理解することができます。

ホームパーティの成功の秘訣は、とにかく、

大勢の人を呼ぶことだと、いいます。

すれ違うのに互いに避けあうほど人がいると、

良いパーティに参加したという印象が強まるのです。

それは、親密距離まで近づいたことから受けていることです。

 

肩幅ほどの距離に敵意を抱いていない人が近づくことで、

より友との親密度が高まるのです。

ところが、日本人の中には社交性を必要とする

ホームパーティを苦手とする人も少なくありません。

人数が少なくても親密距離を演出するためには、

空間が小さくなれば良いのです。

その究極の姿が、小間の茶室であったと考えれば、

客人をもてなすための日本人独特の知恵といえます。

 

たとえば3畳あるいは4畳半の広さに、6~7人が入り込めば、

親密距離になり仲が深まるのも間違いありません。

普段は趣味の空間として活用しながら、客間としても活用するのです。

たとえばLDKの部屋の中に

もうひとつの部屋をつくるように考えても良いのかもしれません。

 

あるいは逆に、LDKと離して、

納戸のような小さな小部屋を隠れ家のようにするのも魅力的です。

さらには庭の片隅に離れとしてつくる手もあります。

それは茶室の発想そのものです。

たとえ庭が広くなくても、隣地に背を向けて、

小さな庭を挟んでLDKとのつながりを生かすのもよいでしょう。

小間のつくり方への発想は、いくらでもあります。

 

そしてとても贅沢で、人生を豊かにしてくれる空間になることでしょう。

家は家族の幸せのためにあるものです。

それに加えて、できれば客を迎える「おもてなし」の家を考えておくと、

夢はまたさらに広がってゆくのかもしれません。

 

追記

 

〇 家でのお客様の迎え方は、大きく変わってきたようです。

  以前は和室という客間が一般的でしたが、それも変わりつつあります。

  現代の家ではどのようにお客様を「おもてなし」しているのでしょうか?

 

〇 親戚や友人などが、現実に訪ねてきている家は25%弱です。

  そして現代ではほとんどがリビングで対応しています。

 

〇 欧米のパーテイーを成功させる秘訣を教えてくれたのは、

  日本料理人であり陶芸家のデヴィッド・ウエルスさんです。

  日本料理に惹かれ、その器である陶器まで作られている、

  アメリカの魯山人と呼ばれている方です。

 

〇 パーテイーの苦手な日本人は、

  小さい茶室に篭ることで親密距離感を近づけます。

  少し狭めの空間を作って客間にしてはいかがでしょう。

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