木って、すごい!

木って、すごい!

木造の隠れた力

 

・樹木の生存戦略
・腐らない、燃えない、弱くない
・快適さの源

 

日本と西欧の違いを、

「木の文化」と「石の文化」の違いと評されることがあります。

確かに日本には世界最古の木造建築物が残され、

生活の中に木が浸透していました。

長い歴史の中から、日本人か大切にしてきた、

木のほんとうのすごさとはどんなものでしょうか。

 

🌲木はどうやって育つの?

 

「木は燃えるもの。木は腐るもの。

鉄やコンクリートと比べて弱いもの」

 

そのように考えている人は、多いと思います。

実際に木造住宅の火災現場はニュースで流れ、

腐ったり白蟻に食べられたりしている話しもよく聞きます。

 

そんな木を使って、命を守る家を建てるのは不安になりませんか。

木ではなく、鉄やコンクリートを使いたくなります。

しかし、木のすごさを知れば、鉄やコンクリートよりも

生物界で進化してきた木の方が、

ずっと優れていることに気がつきます。

 

たとえば、木の組成を調べると、

炭素を中心とした化合物であることがわかります。

炭素50%、酸素44%と水素6%という単純な組み合わせでできています。

では、この炭素・酸素・水素はどこから摂取してきたものでしょうか。

 

酸素と水素は、根から水(H₂O)を吸い上げていることを考えれば単純です。

残るは炭素ですが、それは大気中の二酸化炭素(CO₂) から摂っています。

これを植物の活動として有名な光合成で、炭素化合物に生成しています。

 

ですから植物にとっては、光合成を行なっている葉っぱが、

口であり、養分を吸収する胃や腸でもあるということです。

ところで、その栄養源である空気にはどれくらい

二酸化炭素が含まれているのでしょうか。

じつは0.03%と意外と少なく、空気のほとんどを占めるのは窒素です。

 

木はその少ない二酸化炭素を自分の生存戦略に選んだのです。

それでも人類にとっては大きな量です。

たとえば日本の森林で、木が生長している分だけでも

年間約1億㎥あるといわれます。

産業用丸太の消費量は全世界でも15億㎥ほどで、

世界全体の輸出入量が約1億㎥強です。

 

それに匹敵する量の木が日本の国土だけで生長しているのです。

それも若い木ほど生長が良く、間伐することや、

世代交代させることも必要です。

地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素ですが、

排出量が比較的多い日本としては、

森林資源を有効活用することが地球環境に貢献できることになります。

 

🌲木の生存戦略

 

木は、動物に比べて、とても寿命が長いものです。

中には何千年もの樹齢を数える木もあります。

そして大きくなろうとするのは、

少しでも太陽の光を集めて生き残るためだと考えられます。

炭素・酸素・水素を原料にして、光合成で生み出すのは、

セルロースとヘミセルロース、リグニンを生成しています。

 

その割合は、それぞれ50%、30%、20%です。

これが生長の成果そのものです。

それにしても、大きくなればなるほど、維持するのも大変です。

そこで木という生物が取った生存戦略は、

樹皮のすぐ下だけが生きて、木の中心部分は死んでしまうことでした。

生命活動をしなければ、栄養を回す必要もありません。

 

その証に、木の多くは樹皮の下では水分量が多いのですが、

年輪の中心部では水分量が少なくなります。

さらにスギはわかりやすく、

中心部の芯材は赤味や黒味を帯びた色になっています。

通常の生物は生命活動を終えると、腐り始めます。

そうなっては、木も自分の身体を支えられずに倒れてしまいます。

 

年輪の中心部に見える赤味や黒味は、

じつは腐りにくくした結果なのです。

それなら大きくなり続けながら、

生命を維持するのも容易になります。

やはり自然の仕組みは、人間の知恵を大きく上回ります。

 

🌲木は腐らない?

 

では、木が腐らないというのは本当でしょうか?

たとえば、古代のさまざまな発掘品の中にも、

木製のものが良く出てきます。

少なくとも必ず腐るものではないはずです。

青森の三内丸山遺跡では、大きな栗の木の柱が発掘されました。

文時代の遺跡ですから、2000年以上腐らないで残ったものです。

 

地中に埋まっていたから腐らなかったわけではありません。

そもそも腐るのは、腐朽菌が繁殖することから始まります。

白アリが寄ってくるのにも湿気が必要で、

湿気の多い地中が決して腐らないことの理由ではないはずです。

特に、木の芯材である赤味の部分は、

菌や虫が嫌う成分を満たして対応しています。

 

その証拠を、森の中で見つけました。

間伐材の切り株ですが、伐採してしばらくすると

カビやコケなどの菌が飛来してきます。

こうした菌は、辺材部分では繁殖しても、

赤味の部分では繁殖していません。

明らかに菌にとっては、芯材の赤味部分が、

近寄りがたい物質でできていることを示しています。

 

木の戦略が成功しているのです。

こうして木は、自ら生命活動を終えることで、

腐りにくい身を得ているのです。

それは人間が利用しても同じことです。

世界最古の現存する木造建築物である法隆寺の木は、

さすがに灰白色になっていますが1400年近く立派に残っています。

 

それどころか1000年を過ぎてようやく、

建設時の強度になったといわれ、

建立されて数百年の間は強度が増していたほどです。

 

🌲木は生きている?

 

一方、木を巧みに使ってきた私たち日本人は、

木が生きていると、たびたび表現します。

1000年を経た古材でも、表面を削ると木の匂いがします。

まだまだ価値は失われていません。

油をつけて磨けば、光沢も出て復活します。

確かにまだ生きているように感じます。

 

でも、木が生きているといわれるのは、

呼吸をしていることからです。

空気が乾燥してくると湿気を放出し、

ジメジメしている時には吸収してくれます。

つまり木材が室内空間にあるだけで、

快適な空間が実現できるのです。

ただ同様の効果は珪藻土や漆喰の壁でもあり、

同じように呼吸をしているといわれます。

 

生きているという表現は、

あくまでも呼吸していることに使われているものです。

でも実際に、木が生きていた時代があったことも確かです。

そして生きていると感じることは、

愛着を感じているのだとも思います。

木は生きていると思うだけで、身近に感じ、

大切にしたくなるかもしれません。

 

🌲木は弱いのか?

 

たとえば木の棒と鉄の棒をぶつけあったら、どうなるでしょうか。

誰もが、木の棒が折れ、鉄の棒は

無傷のままとなるのを想像すると思います。

そして、その通りになるでしょう。

木は鉄に比べたら、弱いものだという印象が強くあります。

 

ところが木から生まれた驚きの最新技術があります。

木の成分の半分にあたるセルロースを使って、

セルロースナノファイバーという新素材が注目を受けています。

鉄の5分の1の軽さでありながら、

強度は鋼鉄の5倍あります。

この材料で同様に棒を作ってぶつけあえば、

間違いなく鉄の棒の方が負けるでしょう。

 

木が光合成で生み出しているセルロースというのは、

これほど強い材料なのです。

そうでなければ、高くそびえ立つように

生長することはできなかったはずです。

養分を運んだり、さらに軽くするために

密度を低くしていることで、現実の木の強さとなっているのです。

 

じつはその他にも比較の仕方で、

木は鉄よりも強いと考えられます。

それは比強度という比重あたりの強度で比較するのです。

木の比重は、鉄の20分の1です。

たとえば直径1cmの鉄の棒と同じ重さの木の棒をつくれば、

直径45cmほどの太さとなります。

この2つを押し合えばやはり鉄の棒が先に曲がってしまうでしょう。

 

もしくは、鉄や木の棒を立てて、伸ばして行くと、

やがて自分の重さで潰れる時がきます。

それを比較するとじつは2倍も木の方が強いのです。

さらに吊り下げて同じように比較してみれば、

木は4倍も鉄よりも強くなります。

 

地震に対する強度を考えるときには、

重たい家ほど強く揺さぶられるので、

このような比強度という考え方をします。

木造住宅は、軽くてしかも丈夫であるということになるのです。

 

🌲鉄は燃えない?

 

木の意外な強さは、火に対してもあります。

先のセルロースはとても熱に強いのが特徴の1つです。

でも、木は燃えます。

木に火を近づけると約250度で引火して燃え始めます。

また、近くに火種がなくても450度を超えると、木は発火します。

 

火災の現場では、発生からおよそ5分ほどでこの温度に達します。

一方、鉄は燃えることはまずありません。

溶けて流れ出すのは約1500度で、

一般的な火災では達することはない温度です。

しかし、木が燃える450度になると、鉄の強度は半分ほどに低下します。

 

火事になれば、10分程度でほとんど強度がなくなってしまいます。

ですから実際の鉄骨造の火災現場では、潰れてしまうのがほとんどです。

鉄は火には強くても、熱には弱いのです。

木は燃えると炭になります。

しかし表面が炭になってしまうと、急激には燃えなくなります。

 

しかも、熱は内部に伝わりにくいので、

相応の厚さがあれば芯の部分は燃え残ります。

木造住宅の火災現場では、屋根が燃え落ちても

柱や梁はそのまま残されています。

木はある程度燃えると、火にも強く、熱にも強いということです。

こうした木の強さが認められて、

大規模な建築物でも木が使われるようになってきました。

 

鉄骨造では火や熱への弱さをカバーするために耐火被覆を行いますが、

近年では鉄の周りに木材をはり付けて

耐火性を確保している事例があるほどです。

 

🌲木造住宅の醍醐味

 

強度も火に対する強さも、

そして何よりも優しさも兼ね備えている木を使って家を建てるのは、

とても贅沢なことだと思います。

でも折角、木を使っているのに、

すべてを覆い隠してしまってはもったいないと思いませんか。

 

ほんの一部で良いのですが、どこかで木を表に現して、

使ってみるのはいかがでしょうか。

それが本当の木造住宅を楽しむ醍醐味となることでしょう。

そして、その木を撫でながら、

子ども達にも木のすごさを伝えていただければと思います。

 

追記

 

・木材は地球の貴重な資源である樹木から

人間が伐りだして使っているものです。

その魅力は奥深く、我々は木材を扱う仕事を誇りに思います。

 

・人間や動物よりもずっと昔から生きている樹木は、

地球上で生きていくための生存戦略を持っていました。

その戦略の中に、木材として使うときの大事な魅力や価値が隠されています。

 

・木は生きているといわれますが、じつは死ぬことが戦略でした。

このため、木は腐りにくくできています。

 

・木の強度は、人が発見して使っている鉄の強度よりも強いのです。

セルロースナノファイバーの事例もあって

これから、ますます木の時代が望まれます。

 

・近年は日本でも木造の大型建築物が建てられるようになってきました。

大きな進化は、燃えしろの考え方で、木は燃えないということです。

 

・これから木材が足りなくなる時代が来るかもしれません。

木造住宅を守ること、建てておくことは、

将来は簡単にできないかもしれません。

・住まいに関する疑問質問、お悩み

・この記事について…どんなことでもお気軽にどうぞ!

メール問合せ

電話 0120-698-388

FAX 0120-037-899

24時間留守録対応 折り返しご連絡いたします