消費税と住宅税制

消費税と住宅税制

いつ建てるのが得か?

 

・消費税の経過措置
・消費税と贈与税
・消費税と金利

 

突然の衆議院選挙が終わって、

いよいよ消費税10%が現実性を帯びてきました。

たとえ2%でも、数十万円の出費を覚悟しなければなりません。

同時に、さまざまな制度も施行され、

逆に消費増税後の方が得をするケースもあります。

消費増税に向かって、どのような計画を考える必要があるのか、

まとめてみました。

 

💸消費税が増える!

 

日本に初めて消費税が導入されたのは、1989年4月です。

当初は、消費税率も3%でした。

その後、1997年4月に5%へ、さらに2014年に8%へと税率が上がりました。

そして、衆議院選挙の結果を受け、

2019年10月に消費税10%となることが確実視されており、

実際にその税率になりました。

 

景気動向と増税時期や税収の使用目的が議論されるようになり、

もはや増税を疑う人はいないのではないでしょうか。

また、前回の3%分の増税に比べれば、

次回は2%分の増税で、それほど影響がないという人もいます。

しかし、過去の消費税率アップのデータを見ると、

住宅に関しては単純なものではありません。

 

現実的に市況に大きな影響をもたらしたのは、

1997年の2%アップの時でした。

わずか2%といっても、たとえば2,000万円の住宅であれば40万円です。

この金額が消費税アップの日付とともに消えてしまうと思えば、

無駄な出費は避けたいと思うものです。

 

💸消費税が影響

 

ところで住宅には、持家、貸家、分譲と、さまざまな形態があります。

分譲住宅は、完成した土地建物の売買契約によって成立しますので、

消費税も単純です。そのかわり、

より早く企画し工事しておかなければなりません。

たとえ駆け込み需要があっても、住宅着工という数値では表われません。

 

また、貸家はあまり消費税アップの影響を受けにくい市場です。

それは、消費税が上がっても、同様に家賃を上げれば、

あっという間に回収ができるからです。

消費税アップにより物価が上がるのもよくあることです。

それに対して、持家は消費税の影響を大きく受けます。

中でも、工事費が大きくなる建替えでは、負担額も倍増します。

現実に前回の2014年の消費税アップでは、

初めて家を建てる人よりも、建替えの人が動いたという分析もあります。

 

また、持家で建てられる注文住宅では、

請負工事契約によって建設が進められます。

この時、契約が消費税アップ前でも、

工事の途中で消費税が上がる可能性があります。

工事の日程は、天候などの不可抗力も大きく影響します。

完成引き渡し時を、消費税アップの日程とすると、

多くの問題が発生しかねません。

 

駆け込み需要が発生すると、なおさら工事が遅れることも予想されます。

このため、請負工事契約では、経過措置がとられています。

経過措置とは、消費税アップの半年前までに請負契約をした場合には、

完成引渡しが消費税アップの期日を過ぎても、

8%のままにできる措置です。

 

消費税10%が導入されるのは2019年10月からとなりますので、

その半年前の2019年3月までに請負契約をすませておくと、

完成・引渡しがずれ込んでも消費税は8%となります。

とはいえ、請負工事契約をすぐに行うことはできません。

間取りや仕様を決め、法的な確認もすませるには、

数ヶ月前から検討しておかなければなりません。

消費税への準備は、なるべく早く始めるに越したことはありません。

 

💸消費税以外の条件

 

消費税のことだけを考えれば、

たしかに増税される前に家を建てておくのが得です。

しかし、消費税のアップと同時に施行される住宅の税制もあります。

国の施策としても、消費税をあげることによって、

景気が悪化してしまうのでは元も子もありません。

 

急激な住宅着工数の低下を招かないための施策が用意されているのです。

その代表が、住宅ローン減税と住宅資金贈与に関するものです。

前回、2014年の消費税アップでは、住宅ローン減税の幅が拡大されました。

より高額の家を求め、高額のローンを組んだ人には税制の優遇があります。

 

建物には消費税がかかりますが、土地には消費税がかかりません。

一方、住宅ローンは土地建物の総額で決まります。

つまり、土地代が高い都市型の家を求めた人に有利な、

減税対策となっていました。

これからの立法により、同様の対策が取られる可能性もありますが、

現状ではまだわかりません。

 

それに対して、住宅資金贈与については、

消費税率が10%になった場合という条件がつけられていたことで、

消費税アップの延期と同時に延ばされていたものです。

 

💸住宅資金贈与

 

住宅資金贈与とは、若い世代の住宅取得という特別な支出に対して、

親もしくは祖父母が資金を出してあげることに税制を優遇するものです。

比較的裕福な高齢者層の資産を、

若年層にスムーズに移行するための制度です。

これによって、消費が刺激され、より良い経済活動を導こうとしています。

 

2017年の現行では、1,200万円までの住宅資金贈与には税金がかかリません。

その住宅資金贈与が、消費税アップ後1年の間には、

3,000万円まで控除額が増額されることになっています。

 

その差額は、1,800万円もあります。

この差額分1,800万円を純粋に贈与として受け取れば、

それだけでも500万円ほどの贈与税を納税する必要があります。

消費税どころの金額ではありません。

 

基礎控除なし(特例税率)
1,800万円×458-265万円=545万円
基礎控除あり(特例税率)
(1,800万円-110万円)×458-265万円=495.5万円

※贈与の個別の諸条件により変わります。

 

さらに、住宅資金贈与を行わないことで、

親や祖父母の資産が残ったままとなり、

結果的に相続税が発生することも考えられます。

こうした相続税に関する法律も、すでに2015年に大きく変更されました。

 

💸消費税と相続税

 

2015年の相続税の控除額変更により、

課税対象額が大幅に引き下げられました。

これによって、これまで相続税がかからなかった人も、

広く対象者となります。

2014年と比較すると、

相続税対象者は1.8倍に増え、

5人に1人の割合にまで高まりました。

 

中には対象となる課税対象額が、4,000万円台なかばでも、

相続税がかかるケースもあります。

相続税は資産家だけが対象と思いがちですが、

決してそんなことはありません。

極めて身近な税となったのです。

相続税の課税対象額には、土地家屋、現金や有価証券など、

すべての資産が入ります。

親の家はもう古くなっているので、

資産価値は0だと思っても、固定資産税の対象額分は必ず残され、

200~300万円が計上されます。

家屋は、再建築した場合の価格の20%は、

残されることになっているのです。

 

土地の評価は路線化価格で決まるか、

家屋と同じように固定資産税を基準として、

倍率をかけることで決まります。

大都市圏では土地価格が高く、地方では土地の面積が大きいので、

想定以上に土地家屋の対象額は膨らみます。

それに現金や貯金、有価証券などを2~3,000万円持っていれば、

すでに十分、相続税の心配をしておかなければならないといえます。

 

住宅資金贈与などで、親の相続税の対象となる資産を

子や孫の資産として移行しておくことは、

相続税対策になることなのです。

ところで、こうした贈与税や相続税対策が必要となる家庭で、

住宅資金贈与が使えるのであれば、

今回の消費税アップであわてて駆け込みの

契約をするのは得策ではありません。

消費税が上がるのを待ち、住宅資金贈与の枠を使う方が得になります。

 

💸消費税の着目ポイント

 

相続税と住宅は、切っても切れない関係にあります。

とくに空き家率が高くなっている現状を考えるとなおさらです。

相続発生後も続けて住む人がいるか否かで、

相続税が大きく変わる税制が定められています。

次の世代に住む可能性があれば、相続税の軽減はありますが、

なければしっかり税金がかかる税制になっているのです。

その判断は、子世代の住んでいる家によって判断されます。

 

同居していれば明確で、

親が所有する土地課税評価額の80%が控除される

小規模宅地の特例が適用されます。

その適用される土地面積も、

2015年に240㎡から330㎡に拡大されました。

ただし、同居していない場合には、

少し複雑になり、子世代が自己所有の住宅を持っていると、

親の家には戻らない可能性が高いと判断されます。

したがって、持家を持っている場合には、80%の控除はありません。

土地の評価額がまるまる、相続税の対象となるのです。

 

この場合、子世代の持家は本人ではなく、

配偶者が持っている家でも適合されません。

たとえばマンションであっても持家であれば、

夫婦のどちらの親からの相続でも、

控除は受けられないということです。

それは、自分で家を手に入れる時には、

親の資産状況と相続の問題を確認しておく

必要があるということにつながります。

逆に、同居を前提とした二世帯住宅や三世代住宅では、

判断が緩和された部分もあります。

 

2015年の改正以降、完全分離型の二世帯住宅でも、

土地の課税額は上限の330㎡まで適用されるようになりました。

これまでは、相続税対策といえばアパート建築など、

大きな資産家が対象でしたが、これらを考えると一般の人でも、

相続税対策が必要であり、建替えは有効な手段となります。

最大限に活用するためには、消費税アップの後に

住宅資金贈与を利用して二世帯住宅を建てることです。

もしくは、住宅資金贈与がなければ、

消費税アップの前に建替えすることも有用です。

 

💸消費税と金利

 

最後に、消費税のアップの負担分を、金利の差で計算してみます。

たとえば、現行の金利1.1%、35年ローンで、

2,000万円を借り入れて返済すると、

月々の返済額は57,394円となります。

 

この時の総返済額は、24,105,235円です。

2,000万円の消費税アップ分2%は、40万円です。

総返済額が40万円増えて、2,450万円となる金利を計算すると、

1.2%相当となります。

 

住宅ローン返済額
(借入金 2,000万円)

金利 1.1% 月々返済 57,394円
返済総額 24,105,235円
金利 1.2% 月々返済 58,340円
返済総額 24,502,766円
差額 月々946円
総額 397,531円

(1.99%相当)

 

つまり、住宅ローンの金利が0.1%上がるだけで、

消費税2%相当の総返済額が増えるということです。

住宅ローンの金利は、国債の長期金利にしたがって変動していますが、

マイナス金利の発動など、現在の金利が最も低い時期の金利といえます。

この金利が0.5%上がれば、

消費税10%相当分の総返済額が増えるということです。

 

消費税アップによる負担増も大変ですが、

金利の変動にはもっと注意が必要です。

親に相談ができないのであれば、経過措置を利用して、

かつ金利の安い時期が、最も住まいづくりに適した時期です。

また、親の相続税をしっかり考えながら、

一緒に家の計画を練るのであれば、

じっくり計画して消費増税後1年内に進めるのが良いでしょう。

 

いずれにしても、先に計画を立てなければ、

時期の選択をすることはできません。

ゆっくり家族で、おうちのはなしを進めてみてください。

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