
家ができあがるまで
住宅を構成する建材
・家づくりの楽しみと複雑さ
・住宅の部材
・姿勢の良い家
自動車や家電製品は、実際に完成したものを見て買えます。
たとえどんなに複雑な部品を数々組み合わせてあっても、
完成品があって使うことができれば何も不自由はありません。
住宅も、マンションや建売住宅を買うのであれば同じことですが、
注文住宅を建てようと思うと簡単にはいきません。
そのかわりに自分のこだわりを盛り込むこともできます。
家ができるまでのポイントを、
家を構成する部材に着目してまとめてみました。
🏡家づくりの楽しみ
今住んでいる家に不自由を感じて、
リフォームを計画するか、
あるいはいっそのこと新しい家を計画するとなると、
注文して家を検討することになります。
マンションや建売住宅は、
売買契約によって手に入れることができますが、
注文となると契約の形態も請負工事契約となります。
まだ完成していない建物を図面で表し、
その対価を決めて工事を依頼するものです。
これだけでも複雑に感じます。
だからこそ信頼のできる、
建築会社に依頼したくなるものです。
でも、そのかわり、家に自分を合わせるのではなく、
自分の好みに合わせて考えるという、
家づくりの楽しみを満喫できます。
せっかくの機会なのに、
結果的には建売住宅と一緒になってしまったのではちょっと残念です。
こうした家のスタイルについては、
欧米では関心が高く、
ミラノ・サローネなどの国際家具見本市が開かれ、
30万人以上の来場を誇るイベントが開催されています。
インテリアに関係する家具や、
キッチン・バスルームなどの部材の展示があって、
学べば学ぶほど、魅力的な家をつくり上げることができます。
🏡家づくりの複雑さ
でも、逆にあまりにも情報が多すぎても、迷うことになります。
また、常に情報を得ておかなければ、
検討をすることすら適いません。
その上、部材の組合せ等も検証しなければなりません。
あらかじめ工場で作られた製品を売買で手に入れるのとは違い、
自分の敷地の上に建築してゆくということは、
それほど複雑なことなのです。
その中で、好き嫌いだけではなく、
良し悪しの判断もする必要があります。
注文住宅という請負工事とは、
さまざまな部材をアッセンブルしてつくり上げるものであり、
だからこそ自由に組合せを楽しめます。
そして、最終には、プロである建築会社に相談をして、
意見を聞きながら決めてゆくことにつきます。
住宅を建てるのに使われるさまざまな建材は、
じつは大きく進化してきました。
昔の古民家では、多くは地産の材を、
大工や建具屋、左官、畳屋が手工業でつくり上げるものでした。
しかし今では、建材として流通している部材を調達して、
建設現場で取りつけるものになっています。
そしてこうした建材を生産する資材メーカーが、たくさんあります。
そして資材メーカーが、建材に対する製造者としての責任を負っています。
こうした資材メーカーの生産している建材を使うのは、
地域の工務店だけではなく、
まったく同じように大手の住宅メーカーも使用しているものです。
このような現代住宅ができるまでのしくみが変わることで、
資産としての品質が確保されるようになってきました。
🏡基本の部材/スケルトン
家をつくるのに最も大事な材料といえば、
なんといっても構造体をおいて他にはないでしょう。
最初に地面の上に基礎をつくり、柱を立て、
梁を架けて主体となる構造を作り上げないことには、
その後のすべての建材を取りつけることはできません。
基礎はコンクリートでつくります。
これに鉄筋を入れるのが標準です。
コンクリートは、昔のように現場で練るものではなく、
指定した品質のコンクリートをミキサー車で運んできます。
施工のポイントは鉄筋の配置と、空隙ができないように、
振動を与えて馴染ませることです。
この点は、特に進化しているものではありません。
一部には、工場で固めたプレキャストの基礎を、
現場で置いてゆく手法もないわけではありませんが、
まだまだ普及には時間がかかりそうです。
その基礎の上には、柱や梁などの
木材を組み上げて大きな骨組みをつくります。
特殊な柱や梁が開発されているわけではありませんので、
完成の現場を見るとそれほど変わっているようには
見えないかもしれません。
最も伝統が守られているように感じるところですが、
じつはこの木造の木組みに関しては、
平成の30年間で大きく進化してきました。
その根底にはIT技術があります。
柱や梁を組み立てる建前(たてまえ)の前に、
大工さんが作業場で木材の加工をしてから、
現場で組み上げていたのですが、
今では工場でプレカット加工された木部材が届きます。
建設現場では、それを組み上げるだけで進められます。
このプレカット加工はすべて、
コンピュータの中で管理されています。
組み上がらない状況のエラーをすべて解決しないと、
加工工程には入れません。
それはいわば、仮想の空間の中で一度組み上げて
確認しているようなものです。
そのデータが加工機にも連動していて、確実に加工されます。
この30年間で、今や91%の建物がプレカット加工によるものとなりました。
木造の構造体を考えれば、
すっかり工業化住宅になっているということです。
残りの1割ほどは、
木材の加工ができる職人技を残している地域の建築会社ですが、
大手住宅メーカーだけが工業化が
実現しているわけではないということです。
🏡姿勢の良い家
しかし、工業化やシステム化が進むことが、
必ずしも最適になっているとは限りません。
というのは、昔であれば経験則を踏まえて抑えられたことが、
コンピュータ内で組み上げてなんでもできるようになってしまいました。
経験の浅いデザイナーが無理のある住宅を描いても、
それなりに建ってしまうのです。
現代の技術を使ってシステム上でエラーさえなければ、
現実に建てられます。
しかし、家は耐久財として長く使うべきものです。
とくに構造材は長持ちして、
その他の部材を入れ替えながら、
時代に合わせて対応できる家が理想の家になります。
たとえ新しく建てる時には、
エラーがなくて建築できても、
将来に応用力が残されていることが大事です。
それは、人の姿勢に似ているのかもしれません。
骨格がしっかりと正しく組まれて
姿勢が良ければ健康を維持できますが、
姿勢が崩れていては、いずれ病気の原因となりかねません。
健康で長生きするためには、
正しい姿勢でなければならないのです。
柱や梁の配置がシンプルで、背筋のように通っていると、
長く使える家になります。
もちろん、背筋が通った姿勢の正しい家の方が、
地震などにも有利に働くはずです。
🏡性能の部材/外皮
構造体ができあがれば、次には外皮 で家を覆うことになります。
外皮には 壁や屋根、床、そしてサッシがあります が、
これらの組み合わせによって、
住宅 の快適さの性能が決まります。
とくに、冬暖かく夏涼しいという温 熱環境に関しては、
断熱材やサッシの 性能で決まります。
もちろん、これらの 部材を建築会社が自社で作っている
ケースはきわめて稀です。
大手でも中 小でも、やはり資材メーカーから
材料 を調達して現場施工しています。
たとえばサッシの資材メーカーは、
研鎖してより熱性能の良いサッシを開発しています。
決して一部の建築会社だけのために開発しているものではなく、
広く普及を目指しているものです。
地球環境への貢献にもなることですから、
真剣に取り組まなければならないことでもあります。
ペアガラスは一般化して、
さらにガラスの種類やトリプルガラス、
そして枠材の熱伝達を抑えるために樹脂を使うなど、
日本のサッシの種類は覚えきれないほどあります。
目標とする省エネ性能に合わせて選べば、
地域の建築会社でも性能を向上させることはできます。
実際に最も厳しい基準である
ZEH(ゼッチ)住宅に取り組んでいる
地域の建築会社もたくさんあります。
同じように断熱材も各種ありますが、
最終的には断熱性能を決める熱伝導率と結露対策、
コストとのバランスを考えて
資材メーカーを選んで建てることになります。
🏡仕上材・設備部材
構造体や性能を決める部材は、主にスケルトンと呼ばれています。
スケルトンとは最も長持ちする住宅の部材で、
時と状況によって入れ替える部材を、
インフィルと呼んで区別して考えます。
厳密にいえば、耐震補強や省エネ改修などもできるので、
性能もインフィルと考えることもできますが、
さらにデザインとして自由に選べるものがインフィル部材となります。
その代表的なものは仕上材で、
たとえば外壁や内装の部材があります。
外壁にもいろいろと種類がありますが、
それ以上に内装材は手を加えて変えることも多いと思います。
リフォーム工事で扱われることも多い部材は、
新築であれば自由に選べる部材でもあるということです。
そして大規模リフォームになると、
浴室や洗面などの水周りを改修することもあります。
水周りなどの設備部材はインフィルの中でも大きな部材といえます。
浴室が良い例ですが、
昔は現場で防水やタイル張りをしていたものが、
ユニット化されることで工業化が進んできました。
つまり、浴室も部材になっているということです。
それによって水仕舞いが向上し、
たとえば2階に設置することも比較的容易になってきました。
これまでの部材と同様に、工業化されるという進化があって、
大手企業から中小の建築会社まで品質が均質化してきたということです。
さらに設備部材の中でも、キッチンはさらに家具に近いものと考えられます。
だからこそ国際家具見本市でも、大々的に扱われています。
あらためて、このような部材を組み合わせて建てられている住宅の、
コストの割合を比較してみました。
残念ながら純粋な材料費の比較ではないのですが、
この比率以上に意外とインフィルに
コストがかけられていることになります。
そして最も大事な柱や梁などの構造材は、意外と安いと感じます。
限られた予算で進める請負工事です。
こうした家ができるまでの部材を知って、
計画を進めていただければと思います。