家の象徴となる屋根

家の象徴となる屋根

屋根が物語る家の変遷

・屋根から始まる
・屋根が建物の歴史
・魅力的な屋根

フランスの世界遺産であるノートルダム大聖堂の屋根が焼け落ち、

世界中に大きな失意のニュースが流れました。

およそ800年もの歴史を持つ石造りの建造物の屋根は木でできていたのです。

そして屋根が建物の、象徴であることも痛感しました。

私たちが住む家の屋根について、あらためて考えておきたいと思います。

 

屋根から始まる

 

大きな石に彫刻を刻みながら、

組み上げていったノートルダム大聖堂の屋根が、

じつは木造で作られていたことに驚かされた人も多かったと思います。

鉄やコンクリートがない時代には、

壁や柱を石で作ることはできても、

床や屋根は木材の力を借りなければ容易にはできません。

 

同じフランスにあるラスコー洞窟には、

およそ2万年前のクロマニヨン人が描いた、

動物や人間の絵が残されています。

洞窟は、原始の人類にとって格好の住居でした。

やがて自然の洞窟を出て、

自分たちで家を建てるようになりますが、

その時には屋根を架ける知恵が必要となります。

 

石で壁を作るにしても、木で柱を立てるにしても、

屋根を架けなければ、雨風をしのぐ建物にはなりません。

それは遠く離れた大陸の東の文明でも同じことです。

太古の東アジアで生まれた漢字でも、

屋根の形を象徴した『宀』が、『家』の部首として使われています。

 

やはり屋根を架ける知恵を誰かが考えだし、

それが家の始まりであったのだと思います。

文字を持たない太古の人の活動を考えると、

木を擦り合わせて火をおこすことより、

地面に穴を掘って柱を立て、梁や垂木を架けて、

その上に屋根をつくることは、

より先の工程を考えた、複雑な作業をイメージしなければできません。

 

屋根がついた家を建てることは、火を扱うことを覚えるのと同じくらい、

文明の進化にも大きく関わっていたことだと思います。

もちろん日本でも、同じような時代の、

さまざまな遺跡から古代の住居跡が見つかっています。

その中には、火災の痕跡などもあり、興味がわく発見もあります。

 

古い竪穴式の草葺屋根では、

上から土が被せられていたことがわかってきました。

さらに、日本は太古から、雨の多い国であったのでしょう。

良く観察すれば、壁を立てることよりも、

屋根を架けることの方が主であったことも推測できます。

 

当初の家は円形で屋根を架けるためには、

放射状に垂木を立て掛けて屋根をつくっていました。

最初は1本の柱から始まり、やがて柱の数を増やして支えることで、

空間を広げていきます。

そして雨を避けながら、家の中で焚く炎の煙を逃す屋根を考え出します。

それは今でいう入母屋造りに似ています。

 

寄棟と切妻を組み合わせた複雑な形に入母屋屋根がなっているので、

木造の技術が発展してから生まれた屋根ように思えますが、

じつは古い家になるほど入母屋が多くなります。

古代の遺跡にあるように、円形の家から始まり、

四方に軒を出すことを考えれば当然の結果かもしれません。

 

逆に、木材を加工する技術が高まり、

まっすぐな材を活かして建てられた切妻は、

先進的で神聖な建物に見えたことでしょう。

伊勢神宮のつくりが、その代表です。

屋根の進化を知れば、人が建築物にどんな工夫を凝らしてきたのか、

歴史を振り返ることができます。

 

屋根が建物の歴史

 

屋根を葺(ふ)く材料も、歴史によって変わります。

最も古いのは草葺であることは良く知られていることでしょう。

それは日本だけに限られたことではなく、

中国やヨーロッパの家でもたくさん見られます。

 

藁(わら)葺きや茅(かや)葺きなどがありますが、

実際の建物を見ると、とても厚く首かれているので、

入母屋のような形状でも容易にできます。

さらに日本では、檜皮(ひわだ)葺きや柿(こけら)葺きという屋根材ができます。

 

檜皮は読んで字の如く、ヒノキの樹皮を刻んで屋根に重ね葺きします。

樹皮はもともと樹木が、外部環境から身を守るためのものですから、

間単に朽ち果てるものでは、ありません。

柿葺きは、板葺きの呼び名で、薄く割いた木の板を使い、

竹釘で止めてゆくのは檜皮葺きと同じです。

 

この竹釘も、職人が釜で散って十分に乾燥させることで腐らなくなります。

このような槍皮葺きや柿葺きは、

草ぶきよりも切妻屋根に向いています。

仏教の伝来とともに、瓦屋根が建てられるようになります。

 

日本書紀には、4人の瓦職人が来て建てられたことが記されています。

この瓦屋根の伝来とともに、主にお寺を中心として、

寄棟の建物が建てられるようになります。

 

瓦屋根のはなし

 

瓦屋根は、昔は屋根面に土を盛って敷きつめていました。

土を平らに盛るため、屋根工事も左官の仕事でした。

また、瓦は焼き物ですから、焼成段階で歪みも生じ、

一枚一枚微妙に形状も変わります。

このような瓦のねじれのことを『行儀(ぎょうぎ)』といいます。

 

よく癖を見極め、真っ直ぐ平らに見えるように並べると、

行儀の良い屋根となります。

普段から私たちが使っている言葉も、

じつは屋根工事から生まれた言葉なのです。

瓦は重く運ぶのも大変なので、

元来は地産の瓦があるものですが、

和瓦には3大瓦といわれる銘柄があります。

 

『三洲瓦、淡路瓦、石州瓦』で、

それぞれ産地である地域名がつけられています。

三洲は、愛知県三河地方の呼称で、

物流の中心ということもあり、

日本で最大規模の瓦の産地になっています。

兵庫県の淡路瓦は、美しいいぶし銀色の瓦の代表です。

石州は、世界遺産にもなった石見銀山がある島根県の瓦です。

 

地元産の来待石を原料とする釉薬を塗って焼き上げた赤瓦が特徴的で、

寒冷に強く近年ではロシアにも輸出されていることがニュースになりました。

 

いずれにしても、土器と同じように何千年も前の地層から発掘され、

火災現場でも残されているように、

瓦は耐久性や耐火性にも強いので、

屋根という日射や風雨などの環境が厳しい場所には、

適した材料といえます。

 

その後、木桟に引っ掛ける瓦も開発されて、

一般住宅まで広く普及し、

寄棟・切妻・入母屋屋根のどの形状でも建てられています。

 

屋根の勾配

 

瓦屋根にするには、4寸以上の勾配を必要とします。

4寸勾配とは、4/10の勾配の表現方法で、

角度で表すと21.8°となります。

ちなみに国によって屋根勾配の呼び方は違い、

イギリスではこの角度で表記します。

 

アメリカではインチ勾配ですが、日本の寸の10進法とは違い、

12進法となります。

たとえば、1/2勾配は、日本では5寸勾配、

アメリカでは6インチ勾配、イギリスでは26.6°となります。

 

瓦の家が少なくなると同時に、

勾配の緩い屋根が建てられるようになります。

コロニアルや金属で葺いた建物も見かけるようになりました。

勾配と材料はどちらが先かわかりません。

 

また、太陽光発電を搭載すると、

売電によって屋根は収入を得られる装置になります。

寄棟や入母屋は面積が小さくなり、

発電量を稼ぐために南面の大きな屋根をつくると、片流れ屋根になります。

 

太陽光の普及するにつれて、片流れ屋根も多くなりました。

 

重たい屋根

 

太陽光発電を搭載すると、

重いと思われるかもしれませんが、

じつは意外と軽量です。

また、緩い勾配の屋根材も同様に軽量のものが多いといえます。

 

それに対して、草葺や檜皮・柿葺も、

基本的には何層にも厚く葺くので重たい屋根となります。

瓦葺きの屋根も、当然重たい屋根です。

重たい屋根にすると、地震で不利になるといわれます。

 

現実に、現代の耐震基準で強度を計算する時には、

建物の重さで地震力が大きくなります。

しかし、古代の知恵では、逆に考えていたとしか思えないところがあります。

厚く葺いたり、瓦を載せたりすることはもちろん、

さらに塔では相輪という金属の装飾を載せます。

 

大きな屋根をかけて、重たい屋根でしっかり押さえつけることが、

丈夫になると考えていたのではないかと思われます。

現実の構造計算でも、

柱が土台から引き抜かれるように壊れることが確認されています。

 

重たい屋根にすれば、そのような柱を引き抜く力を、

上から押さえつけることができます。

また、塔などでは、地面は動いても、

重たい相輪と屋根はあまり動かないという、

柔軟な構造の考え方があったのかもしれません。

 

さらには、熊本地震での事例のように、

熊本城は瓦を落とすことで

エネルギーを減少させたという考え方もあります。

決して重たい屋根が、地震に弱いとは限りません。

 

たとえ瓦屋根のように重たい屋根でも、

相応の強度の壁を配置さえすれば対応できます。

 

魅力的な屋根

 

その瓦葺や厚い草葺の屋根などの重さは、

耐震計算上の積載荷重にも相当します。

積載荷重とは、通常の生活で一般的に配置されるであろう家具類を想定して、

定められているものです。

 

つまり、屋根の上に部屋があるのと同等の重さがあるということです。

そうであれば、瓦屋根にするかわりに、

屋上にするという考え方もあります。

草葺を厚くするのも、瓦屋根を急勾配にするのも、雨に対する対策です。

 

防水性がしっかり確保できれば、

陸屋根にして屋上利用も可能です。

船舶などの製造にも使われるFRP防水や、

シートや鋼板による防水の技術革新が進んだことで、

木造住宅でも比較的容易に実現できるようになりました。

 

特にステンレス鋼板の防水技術は、

振動にも強い利点があって面積の規制もなく、

屋根全体を屋上にすることもできます。

もちろん、1階の下屋部分を屋上にすることも可能です。

街並みに配慮する時には、有効な設計の手法となります。

 

こうした屋上利用のポイントは、

どの部屋に連続しているかです。

プライベートルームに連続しているよりも、

家族が集まる部屋と連続していると使用頻度も上がります。

 

庭などでも使えるガーデンファニチャーも種類が増えてきました。

あるいは、裏山の畑が手に入ったと考えても良いかもしれません。

屋根が収入を生んだり、屋根が新しい土地として活用できたり、

魅力的な使い方ができる屋根を考えられる時代になりました。

 

伝統を守るのも、自由な発想を広げるのも、

注文住宅ならではの贅沢です。

間取りに加えて、屋根の使い方も真剣に考えてみてください。

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