ユカ座とイス座

ユカ座とイス座

リビングにどんな椅子を置く?

 

靴を脱いで過ごす日本人には、

どうやら昔からの床に座る暮らし方が

いまだに根づいているようです。

普段生活の中でくつろぐときには、

あなたはどのように座っていますか。

床に座るか、椅子にかけるか。

日本人のリビングでの過ごし方を

改めて考えてみましょう。

 

根深いユカ座志向

 

部屋の使い方で、ソファに座っている人の3倍近くが、

床や座椅子に座っているという調査があります。

どうやら日本人の暮らしには、

根深いユカ座志向があるようです。

しかし昔からの座敷の生活を復活し、

続けたいと考えられているわけではありません。

それは和室が失われつつあることを考えればわかります。

 

こうした強いユカ座志向がある一方、

家具店に行くと、立派な応接セットが並べられています。

もちろん、それだけ購入される人も多いということです。

でもユカ座で使えるダイニングセットは、あまり見かけません。

キッチンの高さを考えれば、

椅子を使ったダイニングセットがなければ暮らしにくいでしょう。

 

その家にも椅子がありながら、

多くの人がユカ座の暮らしに憧れているということになります。

知れば知るほど、日本人にとっては、

ユカ座とイス座の関係は複雑なものに思えてきます。

 

実際に家を新築して暮らし始めている人たちのデータからも、

その迷いを見ることができます。

新築して住み始めた500件以上の家庭に対する

調査から見えてくることです。

 

ソファセットを所有 62.1%

ソファセットにもたれて床に座る 30.0%

来客はリビングで 80.5%

来客はダイニングで 40.9%

テレビ・音楽・読書はリビングで 88.4%

家族が集まるのはリビング 74.5%

※生活のありよう調査N:518※

 

たとえば、ソファセットを所有している家庭の割合は、62.1%です。

ユカ座の暮らしをしたい人が72%であることを考えれば、

思った以上にソファセットを置いている家庭が多いのです。

 

ところが同じ調査で「ソファに背をもたれて床に座ることが多い」

と答えている家庭も、30%あります。

これらのデータを見る限りは、

ソファを所有しながら、ソファに座っている人は、

およそ半数です。

せっかくソファを買っても、

実際は背もたれにして使っているのです。

普段の生活の中で、思いあたる人も

少なくないのではないでしょうか。

つまり、リビングではソファに座る人と、

床に座る人、そしてソファはあるけど

ソファに座らない人たちがいることになります。

 

このようにユカ座とイス座の暮らし方が分かれるのは、

リビングです。

それはリビングの使われ方が明確になっていないことの

表れでもあります。

同調査のデータを見てもそれがわかります。

 

これらを見ると、イメージしている以上に

ダイニングの役割が高いことがわかります。

そして新しいリビングにソファセットを置いてみても、

実際にはリビングが使いこなせていないのです。

 

では、日本人に合ったリビングの過ごし方とは

何でしょうか。

本当のリビングの過ごし方を学ぶ機会もなく、

リビングの価値にまだ

気づかされていないのかもしれません。

 

床に座るか、椅子にかけるか?

 

あなたの暮らし方はどちらですか?

 

上足の文化

 

日本人がユカ座の暮らしを忘れられないのには、

上足の文化が残されていることが

大きいと思われます。

玄関の上り框で靴を脱ぐことで、

室内には清潔感が保たれています。

そのため気持ち良く直接床に座ったり、

寝転んだりすることができます。

 

また、畳が普及したこともユカ座の風習を築く

大きな要因になります。

本格的な和室でなくても畳を敷きたいと思う人は、

まさにユカ座の暮らしを望んでいる人です。

ユカ座の暮らしを望む人の中には、

椅子にかけるよりも床に座る方が

姿勢を保てると感じている人も多くいます。

 

同じように上足のスタイルである韓国では、

オンドルが畳と同じ役割を果たしました。

床暖房としてのオンドルは、

石の床材の上に紙を貼って仕上げてあります。

床暖房では、やはり直接座るのが、

気持ちの良いことです。

日本と韓国のどちらの国も、

イス座の国である中国の影響を大きく受けながらも、

ユカ座の暮らしを失っていません。

 

面白いことに同じユカ座でも、

実は日本と韓国では座り方に違いがあります。

 

日本では正式な座り方は正座とされ、

韓国では男性はあぐら座で、

女性は立て膝で座るのが正式な座り方です。

 

ユカ座のはじまり

 

日本の茶の席では、正座からのきれいな立ちあがり方が

定められています。

主人も客人も互いに相手の反対側にある足を

立てることから動きだします。

相手に尻を見せずに、

美しくふるまうための行動の美学です。

 

ところが茶の湯が始まった頃には、

じつは日本にはまだ星座の風習が

なかったとされています。

当時は韓国と同じあぐら座や立膝で座るのが

普通だったようです。

もちろん千利休が座る姿勢も同様で、

現代から考えると立膝やあぐら座で

お茶を点てて飲むのは

なかなか想像しにくいことです。

 

その後、日本では正座が定着することになります。

石に紙が貼られただけの韓国のオンドルよりも、

厚みがあって柔らかい畳の上の方が

正座に向いています。

さらに服装も、チョゴリの衣装より

膝が締められている和服だから、

正座の風習が広まったとも考えられます。

 

いずれにしても畳が広がり、

数寄屋造りの家が建てられると、

日本人は正座をすることが普通になりました。

江戸時代を通じて400年ほど続くと、

すっかりユカ座の暮らし方が

身体に染みこみました。

 

ところが、正座という呼び名は明治時代に

つくられたもので、

本来は端座とか「かしこまる」といわれていました。

 

イス座の普及

 

文明開化とともに、西洋の生活様式である

イス座が入ってきました。

しかし、すぐに受け入れられたわけではありません。

食卓も近年まで、ユカ座で使う「ちゃぶ台」が一般的でした。

 

ところが戦後にはあっという間に、

イス座の生活が普通になりました。

今では、椅子がまったくない家は、

おそらくないといっても良いでしょう。 

そして正座やあぐら座に苦痛を感じる人も

たくさんいます。

正座は膝や足首への負担が多く、

あぐら座は腰や背筋への負担があります。

その点の快適さは、イス座の方がずっと楽です。

たとえば、介護を考えても、

立ちあがりやすい高さにある

ベッドや椅子の方が便利です。

 

歴史の上で意外なのは、

正倉院の所蔵品の中にも椅子があることです。

室町時代や平安時代には

椅子が使われていた時期もあります。

さらにさかのぼると、埋葬品としての埴輪にも

椅子に座った姿の出土品もあります。

決して日本人が椅子を避けてきた

わけではありません。

 

そんな椅子の歴史もあるのに、

今また、ユカ座の暮らし方が求められています。

ソファを背もたれにして床に座ったり、

ソファの上にあぐらをかいて座ったりしているのです。

まるで、腰かけるための椅子としては、

まったく別の使い方を考案したのと同じです。

 

ユカ座にしてもイス座にしても、

生活スタイルを決める大切な要素です。

特にくつろぎをテーマにするスペースでは、

よく考えておく必要があります。

 

ユカ座の椅子

 

たとえば座椅子というのは、

その象徴のアイテムです。

あぐら座の時の腰への負担を軽減してくれます。

同様に、正座のひざの負担を解消してくれる、

おじゃみ座布団などもあります。

いずれもユカ座の生活を豊かにするものです。

 

イス座でも最近聞かれるようになった

カウチ型のものは、

日本人に取り入れやすい椅子です。

背もたれのつき方が特徴的で、

通常の椅子の座り方をせず

足を伸ばして座れるようになっています。

カウチは元来、椅子ではなくデイベッドであり、

その名の通り昼寝に使うベッドの類でした。

このカウチをダイニングとリビングの間に置くと、

ダイニングにもリビングにも向かって

使うことができます。

もちろんユカ座のリビングで背もたれにすることもできます。

これによってイス座とユカ座の空間が、

ゆるやかな関係で結ばれることになります。

 

リビングに置きたい椅子

 

ここまで多くの人が希望するユカ座の暮らしを考えてみて、

逆に私たち日本人がリビングの本当の使い方を、

まだ理解していないかもしれないという疑問も

わいてきます。

それはイス座の暮しを実現するのに、

椅子の中でもソファを選んでいるから

なのかもしれません。

 

正倉院にも残っているように、

椅子には宝物の家具としての価値もあります。

極端な事例では、

座るための椅子ではなく、

飾るための椅子としてのデザインを

求めたものまであります。

そうであれば、自分の個性を椅子で表現して、

その椅子に腰かけるための空間が

リビングであると考え直すのです。

これによってリビングの使い方は

椅子の選び方の問題となります。

 

ほんとうに家族が集まる場所として

リビングをつくるのであれば、

ユカ座の暮しの方が日本人には

向いているでしょう。

しかし、自分のこだわりの椅子を置くと

空間がまったく変わってしまいます。

たとえばそれを象徴するのは、

ロッキングチェアです。

その椅子によって自分の世界がつくりだされます。

ロッキングチェア

 

特に一人掛けのシングルチェアなどには、

名作と呼ばれる椅子がたくさんあります。

バルセロナチェア、シェーズロング

エッグチェア、ベアチェア、

イームズラウンジチェアなど、

これらの椅子は座ると不思議に

独特の個人の空間をつくりだしてくれます。

もちろん名品だからこそ、

くつろぎの格も違います。

 

良い椅子は時代を超えたデザインであり、

古びれてくるほどに風格が増します。

急いで手に入れなくても、

いつか手に入れて自分の家に

置くのも良いでしょう。

 

リビングにはソファではなく、

こうした椅子を置くことを

一度イメージしてみてください。

それが本当のイス座の心地よさを

教えてくれることになります。

それは新しいリビングの過ごし方を

発見したことにもなるはずです。

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