おうちの話

ムクの木、集成の木おうちのはなし109

構造材としての木材についてムクの木、集成の木

・木ってどれだけ強いのですか?
・やっぱりムクの木がいい?
・木材の強さを決めるもの

木の椅子、木のテーブル、木の床、木の家、観葉の植物。スギの木の香りが漂い、ヒノキが光を和らげ部屋に満ちる。家ではなぜか、やさしい気持ちになれる、自然の力があるようだ。

🌲木ってどれだけ強いのですか?

高層マンションやアパートなどの集合住宅を除けば、日本で建っている住宅のほとんどが木造です。なんとなく木よりも、鉄やコンクリートの方が、強くて丈夫だと思っている人も多いのではないでしょうか。

でも、ほんとうは木はとても強く、建築には最適の材料です。そのことは、なによりも歴史を見ればわかります。鉄筋コンクリートの建物はおよそ130年前に初めて建てられ現存していません。鉄骨造の橋も、初めてイギリスで建造されたのは230年前です。

それに比べて世界最古の木造建築物は、1400年前に建てられ、世界遺産になっている法隆寺です。その上、昭和の高度成長期に工事されたコンクリートや鉄でできた、トンネルや橋梁などの社会インフラは、半世紀ほどで大規模な改修工事を必要としています。

また、比重に対する強度である比強度をみても、じつは木材の方が鉄よりも強いのです。人類が生み出した科学や知恵は、自然が創造した樹木の生存戦略には、未だ追いつけないということでしょうか。それほど、木材は強くて理想的な建材なのです。

🌲木材は割れても大丈夫?

でも、やはりまだ木材には、心配があります。たとえば、割れが入ったり腐ったりしている木材を見かけることがあるからです。もちろんコンクリートにもヒビが入り、鉄も錆びますが、木材の方が不安になってしまいます。こうした不安に対しては、実験で確かめてみる他はありません。

これまでに何度も実施された検証実験でも、木材料面の干割れの量と強度のとの関係に相関があることは認められていません。たとえば静岡県林業技術センター、池田潔彦氏の研究報告(2005年)があります。スギ無等級材の柱の基準強度を、柱に入った割れの大きさに対して調査しています。右の図表1を見ても、割れの多さによって強度が低下している傾向は見えません。

木材は割れていても強度は落ちてはいないのです。ただし、材を貫通するような割れに関しては強度に関係するといわれています。確かに柱が真っ二つに割れてしまっては、誰が考えても強度が保てるとは思えないでしょう。しかし、じつは木材は基本的に貫通割れを起こすようにはできていません。樹木そのものに、貫通割れを起こさない生存戦略があるのです。

それは樹木が成長するときには、まっすぐに伸びるのではなく、捩(ねじ)れるように生長しているのです。ヘチマやゴーヤなどの、蔓系の植物が巻きついて育っているのと一緒です。切り株の年輪をどんなに観察しても、捻れていることはわかりません。また、板状になった木目や柾目を見ても、やはり捻れていることはわからないでしょう。

しかし木材の繊維は、この捩れに沿って伸びています。そして干割れを観察してみれば、やはり疲れに沿って割れていることがわかります。つまり、柱にできる干割れはほとんどが斜めに入ります。そして反対側の干割れも同じ方向に入ると、表と裏では交差しているので、単純な貫通割れが起きにくいようになります。

だから木材は、多少割れても強度が保てるようになっているのです。こうした戦略がなければ、樹木も大きく生長することはできません。ほんとうに大自然の設計は偉大です。

🌲やっぱりムクの本がいい?

木材が理想の建築材料であることはわかりますが、人間はこの木材の使い方に関する技術開発もしてきました。単純なムクの材として、正角や平角の柱梁や、板材として利用するだけではなく、合板やエンジニアリングウッドとして木材を加工して、新しい建材を生み出しているのです。

でも、やっぱりムクの木の方が良いというイメージがなんとなく残っていませんか。木材という自然が生み出した材料の価値を知るほど、人工的なものよりも、自然に近いものの方が良いと思ってしまうものです。なぜかコンクリートや鉄とは、逆の印象です。

しかし、たとえばムク材良いか、それとも集成材が良いかと考える前に、知っておかなければらない、より木材の長所を引き出すためのポイントがあります。木材の利点を生かして使うためのものだと知れば、単純な良し悪しの比較は意味がありません。その大切なポイントとは、乾燥です。

🌲木材の強さを決めるもの

木材には干割れの心配と同じように、腐ってしまう心配があります。でも、法隆寺の実例があれば、木材は条件次第で千年以上もの耐久性がある、強い材であることはわかっています。単純なことで、木材を腐らせてしまう腐朽菌は、相応の湿気がある場所に繁殖します。

菌だけではなく、木材を食べてしまう白も、湿気のある場所を好みます。つまり、湿気が木材にはいちばんの大敵なのです。またさらに、木材は乾燥するほど強度が増すこともわかっています。法隆寺のヒノキが建設当時よりも強度を増し、千年を経てようやく建立当時の強度になっているといわれます。

その要素にも、乾燥による強度向上が考えられます。耐久性や強度を含めて、木材の強さを決めるのは乾燥なのです。伐採直後の樹木の含水率は、構造材としてよく使われる針葉樹では100%を超えます。木材の含水率というのは、完全に乾燥させた重量を基準にして計算するので100%を超えることがあるのです。

この樹木が乾燥されて木材として利用されるのには、基本的に20%以下まで乾燥する必要があります。では、現実的にどれほど乾燥させれば良いのでしょうか?その答えは、実際に建てられて使われてきた住宅の各部位の含水率を測れば目安がわかります。築30~150年のデータを見ても、ほぼ共通しています。

こうした自然状態の含水率を、平衡含水率といいます。家を建てる時に使う木材は、部位によって、できればこの平衡含水率まで下げておくことです。また室内の材は、近年では気密性が高まり冷暖房があるので、さらに乾燥が必要です。

🌲乾燥にかける費用

ではどのように乾燥させるのでしょうか。単純に考えても、木材を乾燥させるためには、温度を上げるためのエネルギーと相応の時間をかける必要があります。また乾燥には、天然乾燥と人工乾燥をはじめとして、いくつかの方法があります。

天然乾燥では、乾燥させる前に木場などで水に浸け、樹脂分を水に置きかえてから乾燥させます。20%以下に乾燥させるためには、少なくとも1年以上の時間がかかります。人工乾燥であればもっと早く乾燥できます。温度によって100度以上に温める高温乾燥、50度以下の低温乾燥、その中間の中温乾燥があり、蒸気式と除湿式、減圧式などがあります。

当然、それだけの設備も必要とし、木材を乾燥させるのにはコストがかかります。また、柱材よりも梁材の方が大きな断面を必要とするので、乾燥はより難しくなります。木材には節の状況や強度など、さまざまな等級があって価格が違いますが、じつは含水率によっても大きく価格が違います。

🌲ムクと集成材

ここで、ムク材と良く比較されることのあるエンジニアリングウッドである集成材について考えてみましょう。じつは集成材とは、より乾燥された材を得るための技術でもあると考えることができます。

たとえば、集成材をつくるのに、厚さ3cmほどのラミナを作りますが、こうした小径材にすると乾燥のためのエネルギー量と時間が短縮できます。逆に接着行程のある集成材は、乾燥させなければ製造できません。そして乾燥させるほど木材は形状寸法も安定するので、管理された木材になることも利点です。

でもムクの木に比べれば、集成材を生産するためには、製材や接着など余分な工程とコストがかかります。それを考えると、ムク材よりも集成材の方が、価格が高くなって当然のことです。そして、集成材と同程度の含水率にしようと思えば、ムク材も同様に価格が高くなります。たとえば、住宅に使われる柱の価格で、比較してみると次の通りです。

含水率20%   ムク材  2,500 (国産材)
含水率15%   ムク材  4,000 (国産材)
含水率15%   集成材  4,500 (国産材)
含水率15%   集成材  2,500 (WW,RW)

 

最後の集成材は、材料の違いです。外材のホワイトウッド(WW)やレッドウッド(RW)であれば、集成材でも安く手に入ります。安定した供給ができるので大手メーカーで採用しているケースが多いのですが、比較的安い材料です。こうしたこともしっかり知っておくことが大切です。

集成材を勧める人の中には、「集成材の強度はムク材の1.5倍」という人もいます。しかし現在の基準強度を考えれば、誤った表現です。自然の材料である木 は、強度にも個性があり、グレーディングで区分された材の中には集成材よりも強い材はたくさんあります。集成材にすれば、強くなるというものではありません。

逆に、ムク材を勧める人の中には、接着剤でくっつけることに否定的な人もいます。種類によっては、水や火に強い接着剤もあり、心配であれば、集成材を見て、接着面が黒い」色をしていれば安心できます。レゾルシノールという接着剤で、世界中で橋梁や大型建築物にも集成材は使われています。

じつは第二次大戦では日本軍はゼロ戦のプロペラに、この接着剤を使用した集成材で作った実績があります。70年以上も前に作られたその材は、いまだに剥離もしないで残されています。また、東大寺の柱や数々の仏像や寄木細工などでも、木材を合わせる技術は、日本では伝統的に行われてきました。

陸稲(おかぼ)や漆(うるし)を接着剤にしていました。もっとも乾燥のためではなく、大きな材が手に入らなかったためです。乾燥されていないムク材を使うよりは、しっかりと乾燥させた集成材を使う方が得策といえます。柱や梁だけではなく、構造用の合板もいわば集成材の仲間です。

近年では特に建物強度を確保するために、2階の床に厚物の合板を設置する現場も増えてきました。ムク材だけにこだわるのではなく、木材の樹種を適材適所に選ぶのと同じように、ムク材と集成材を選んで、目的に合わせて上手に使うことがなによりも大事なことです。

木造住宅の主役である木材について、これだけのことを知っておくと、建設会社とのコミュニケーションを楽しめるようになります。近隣に建設現場を見かけることがあったら、ちょっと質問をしてみると良いでしょう。

追記

ニルバホームが考える無垢の家とは

 <無垢床材の施工実例>

 <木の家参考実例>