おうちの話

借りるのが得かおうちのはなし114

建てるのが得か?借りるのが得か

・貸家と持ち家
・シェアリングの時代?
・建てて損をする条件

持ち家に住むのが得か、それとも借りて住んだ方がよいのか。車でもカーシェアリングが増え、持つよりも借りる人が増えてきました。

いろいろと計算をしてみると、借りて住むのか建てるのかを、迷うことも多いと思います。また地域や国によっても条件は違います。あなたはどちらを選びますか?

🏠貸家と持ち家

アベノミクスの効果でしょうか、住宅建設戸数が上向いています。国土交通省の発表では、2016年上半期の住宅着工数は前年同期比より5.2%伸び、46万3469戸ありました。その中でも戸数で最も増えているのは、貸家で1万5千戸以上、8.7%の伸びです。

さらに建売住宅も5400戸増えました。注文住宅も1.9%増え、13万7534戸でした。分譲マンションだけは昨年度よりも少なかったのですいが、景気の上向き感を表すニュースとして受け止められていました。この住宅の着工数ですが、ほとんどの年で戸建て住宅よりも貸家の方が多く建てられています。近年では、貸家の中にシェアハウス形式の住宅も増えています。

シェアハウスは、新しい形の貸家です。単純な単身世帯向けの小住宅ではなく、一緒に暮らす人たちのコミュニティを形成するなど、いわば共同生活をするための貸家です。たとえば1棟の家を複数の人で借りて、リビングや水周りなどを共有しながら暮らします。

若い単身者の居住形態として普及し始め、戸建て住宅がシェアハウスとして使われているケースも見られます。それだけ貸家が建てられているのですから、家を借りて暮らしている人も多いのではないかと思えてきます。でも、国際的なデータを見比べてみると、日本は持ち家率が比較的高い国です。

国土交通省のデータでは、持ち家率の高いイギリスやアメリカとも大差なく、フランスやドイツよりも持ち家率は高いのです。また、同じ日本の中でも地価の高い東京では、持ち家率は50%を切り、ドイツと同じくらいのレベルです。さらに持ち家率の低い地域は、沖縄や福岡と続き、意外と地域による差もあります。

しかしそれは逆に、人の増加の数に比べて、まだまだ家の数が足りていない地域があると見ることもできます。いずれは持ち家に住みたいという気持ちが、日本では強くあります。貸家に住んでいる人へのアンケートでは、全体で79%が持ち家を望んでいます。中でも30代前半まででは、その率も90%近くになります。

根強い持ち家志向が、あるということです。持ち家の中には、戸建住宅はもちろんですが分譲マンションも、含まれます。さらに、既存住宅の購入も含まれますが、日本はこうした不動産の流通は驚くほど少ないのが現状です。これほど持ち家の志向があり、空き家問題もあるにも関わらず、新築住宅戸数の中で、およそ4割弱が貸家です。

持ち家率の低いドイツであればわかりますが、比較的持ち家で暮らしている人が多く、しかも世帯数より1割以上も住宅が余っている日本で、どうしてこんなに賃貸住宅が建てられているのでしょうか。その答えは、単純なことです。それは、賃貸住宅が儲かる仕組みであるからです。

しかし、残念ながら儲かるのは住まい手ではなく、事業主と賃貸住宅を建てる建設会社です。借りた方が得か、建てた方が得か、その答えを知るためには、貸す側の立場になって考えるのが良いかも知れません。

🏠シェアリングの時代?

世代が変わると、さまざまな考え方も変わります。自動車産業も、その世代の考え方の違いに直面しています。以前に比べれば、自家用車を持つという車の所有価値が低下して、自動車が売れなくなったのです。一家に一台は車を持つという考え方は、都市部を中心に失われつつあります。そしてカーシェアリングという事業が普及し始めています。

車を所有することを考えると、相当の費用がかかります。都市部で大きいのは駐車場代です。戸建て住宅で自宅の敷地内に置ければ負担も少ないのですが、マンションなどの共同住宅では負担が大きくなります。

これがカーシェアリングでは、使った時間分の費用を負担するだけで良くなります。しかもレンタカーに比べると時間の制約も短く、単価も安く使えます。近距離であればガソリン代もその利用料の中に含まれます。当然、他人が不快になるような使い方はしないことはマナーとしてありますが、洗車や掃除をする必要もありません。

確かに車の取得費や税金や車検・メンテナンス費用、駐車場代までを計上して、使用頻度で割り算をすればカーシェアリングの方が得になる人は大勢いると思います。休みの日に近距離でしか乗らない場合は、なおさらです。

でも、そんなに利用者に得である仕組みなら、カーシェアリングの事業者は儲かるのでしょうか。そんな心配よりも、儲かるからこそ事業化していることに間違いないはずです。

単純に考えれば、1台の車をできるだけ多くの人が利用し、その車の稼働率が高くなれば儲かるのです。ですから毎日のように乗って自動車を活用し、動き回っている人たちが検討すれば、間違いなくカーシェアリングの方が高くつきます。

使わなければ費用もかからない車とは違い、住宅は1日でも過ごさない日はありません。たしかに持ち家の場合にも、税負担やメンテナンスなどの煩わしさから、賃貸住宅の方が良いという話しも聞かれます。たとえばホテルに宿泊することは、家をシェアリングしているようなものです。

その部屋で過ごしても電気代も固定資産税も払わなくてすみます。掃除もしなくて良いのです。しかし、毎日ホテルで過ごすのは、どこかの貸家を借りることよりも圧倒的に費用がかかります。

🏠貸家は儲かるのか?

ところで貸家も逆に、事業者の気持ちになってみればどうでしょうか。当初の建築費と租税などの経費、さらには現状復帰などの負担を当然のことながら計算して貸して、事業として成り立たせています。身を切ってでも、貸す事業者はありません。

つまり、賃料の中にすべての費用が織り込まれているということです。さらに事業としての収益も、賃料の中に含まれています。この貸家の収益は、おおよそ10年で元がとれるように計算しています。その理由も単純で、新築から10年以上経つと、空室が増えてしまうのです。

それでも元を取りかえした貸家は、全室空き家にならない限り事業者には大きな利益が転がり込みます。また、貸家を建てる時には、借入金や減価償却を駆使して、相続税や所得税の節税対策を行ないます。2015年1月より相続税の控除額が改正されたので、その対策として貸家を建てる人も多くいます。

こうした知恵の多くは、地主が自ら学ぶよりも貸家を得意とする建設会社の営業が教えてくれることです。年間に数万戸の住宅を供給する大手の企業は、むしろ戸建住宅よりも貸家を得意としています。そして土地を持ち貸家を建てている多くの地主は、節税対策のために何度も貸家を建ててくれるお得意様です。

しかも戸建て住宅を細やかに建ててゆく手間に比べれば、住まい手の顔が見えない貸家は手間が少なく効率的です。これらの背景が、国際的にも狭くて安普請で家賃が高いという日本の貸家の実情を生み出しているのです。

家賃を払いながら借りて住むということは、本来は10年もあれば元を取れるような建物に住み、事業者の利回りを手伝っているようなものです。まずは、この点を考えるだけでも、借りた方が得であるとは思えないはずです。

🏠建てて損をする?

でも、中にはまだ賃貸の方が得だと語る人もいます。持ち家を建てても得をするとは限らない計算の根拠はどこにあるのでしょうか。その理由の根源は、資産価値がなくなるという点です。ローンを完済しても住宅の価値がゼロになってしまっては大損です。

また、住むこともできないほど失われる可能性もあります。大きな戦争に巻き込まれることが過去にあったヨーロッパの人の中には、住宅という資産を信じていない家族も少なくないと聞きます。でも戦争は、日本は世界で最も長く戦争を起こしていない国です。

他に災害があります。確かに気候変動や地震の活発期に入り、日本でも毎年、災害情報が聞かれることが多くなりました。災害で家を失えば、確かに資産を失ってしまいます。貸家に住んでいれば、また新しい貸家を見つければ済むことかもしれません。

しかし、日別に災害が多い国とは思えません。また、激甚災害に指定されれば、国の保護もあります。その他に資産価値が失われるとすれば、住宅地価格の下落です。確かに上がることは少なくなってしまいましたが、土地価格がゼロになることは考えられません。

ただ、建物にはなぜか、ゼロにするような商取引が慣習になっている現状があります。良くメンテナンスされた古い建物になるほど価値が上がる欧米の評価とは、雲泥の違いです。この日本の事情が、建てた方が得か、借りた方が得かという問いへの答えを複雑にしているのです。

この慣習も、寿命が短く安普請の賃貸住宅市場から持ち込まれたものです。減価償却をすることで節税対策をしている賃貸住宅では、30年もすれば現存価値はなくなり、文字通りにゼロとみなされてもすでに元を回収しているので良いです。

🏠貸すことで価値がわかる

しかし、これまでの実例を見ても、木造住宅が30年で壊れてしまうものではありません。現に50年以上残されている住宅は数えきれないほどあり、さらに持ち家住宅は、貸家よりも丹精を込めコストの掛け方も違います。

貸家市場を逆手にとって、ローンを完済した持ち家の価値を貸家にできるかで判断してみれば本当の価値がわかります。本当にゼロの評価であれば、ただ同然でしか借り手がつきません。しっかりとメンテナンスしながら住み続けたいと思う住宅であれば、もっと家賃の高い借り手がいるはずです。

その資産価値の分だけでも、持ち家を選んできたことで得をしているはずなのです。昨今のシェアリングハウスは、一人ではとても借りることができない趣のある戸建住宅に、何人かの若者たちが集まり共同で暮らすことから広まり始めています。人数がまとまれば、高い家賃も分担できます。

空き家問題が取り上げられている近年、こうした戸建て住宅の貸家の流通を、国も制度化して活性化するよう真剣に取り組み始めています。

🏠将来の安心

また、貸家住まいでは、高齢になってからの住む場所にも心配が残ります。高齢者が借りることができる賃貸住宅の不足が問題になっています。

やはり国が高齢者専用賃貸住宅の整備を、推進していますが、家賃負担は無くなることはありません。働けなくなっても、家賃分の収入を確保するか、その分を貯蓄しておかなければ生きて行けないのです。

それを考えれば、住宅ローンを完済した持ち家という資産を持てば、暮らして行くだけの家を確保できます。どんなに歳をとっても、住む場所だけは必要です。

ここまでのビジョンが見えたら、迷うことはありません。将来は貸し出すことも想定して、持ち家を求め、他の人も住みたくなるような環境を維持することが、いちばんの得策だということです。