おうちの話

住宅と相続税おうちのはなし122

見えてきた新相続税の実情住宅と相続税

・相続税基礎控除額の変更
・土地建物の相続税の実態
・土地と家屋の評価額

税金の基準日は、ほとんどが1月1日です。年末調整や住民税はもちろん、固定資産税なども元日が賦課基準日であり、税制改定も元日に行われます。

税制と住宅、中でも相続税と住宅は深く関わっています。2015年1月1日には、大きな相続税の改定が行われ実施されてきました。2016年12月15日に改定後の相続税状況が、国税庁により公表され、新しい税制下の実情が見えてきました。

💸相続税基礎控除額の変更

2015年1月1日に改定された相続税制では、以下のように基礎控除額が引き下げられました。

改定前の控除額
5,000万円 + (1,000万円×法定相続人)

改定後の控除額
3,000万円 + ( 600万円×法定相続人)

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の場合であれば、

改定前
5,000万円 + (1,000万円 ×3人)=8,000万円

改定後
3,000万円 +(600万円 ×3人)= 4,800万円

さらに、この時の改正では、高額相続では最高税率も上がりました。他に未成年者の相続人に対する控除や障害者への控除、相続対象となる小規模な宅地の面積緩和なども同時に施行されています。

税制とか法律のことばは、なかなか解釈がしにくいものです。控除額の改正というのを簡単に書けば、遺産が8000万円以下であれば相続税がかからなかったものが、4800万円を越えれば相続税がかかるようになったということです。

つまり、この改正によって相続税を納税しなければいけない対象者の裾野が広がりました。改正が国の税収を増やすことが目的であることは間違いありません。社会保障費の負担をまかなうためには、必要な改正でもあります。それにしても相続税なんて、ほんとうに一部の資産家の話しで、関係ないと思っている人が大半だと思います。

しかし、この改正が相続税対象者を広げるものである以上、身近な人にも影響が出始めていると思われます。では、どれくらい影響があったのでしょうか。でも、その分析も簡単ではありません。相続税の納税と納税申告は、相続が発生した日から10ヶ月以内に行わなければなりません。通常、相続の発生とは被相続人が、死亡した日とされます。

2015年に税制改正が行われて、その年末に新税制の対象者になったとすれば、翌年2016年の10月までに申告することになります。新税制下での相続状況がわかるのは、その後です。2016年12月15日に、国税庁が相続税の状況を公表して、ようやく2015年の相続税改正の状況が公表されました。

その中には、相続資産の内訳として土地や建物の資産状況もあります。相続税と住宅は切っても切れないものです。たとえば、2015年には約129万人が亡くなり、そのうち相続税の課税対象となったのは10万3千人でした。前年に比べると83%もの増加です。

およそ12人に1人の割合で、相続税が発生しているということです。この状況をグラフにしてみると、2015年の相続税控除額改正が、大きな変化であったことがわかります。この課税割合も、全国12カ所の国税局事務所の中でも、東京国税局では12.7%に上りました。

8人に1人は、相続税を納税しているということになります。さすがに土地の評価額が高いことが影響していると想像できます。良く調べると、それだけでもありません。この相続税が、身近になってきているだけに、相続税への対策も知っておきたいところです。

💸公表された相続税の実態

2016年12月15日に公表された、相続税の申告状況は、右の表の通りです。国税庁の発表を受けて、日本経済新聞や読売新聞などでも記事になりました。見かけた方もいらっしゃると思います。しかし、これらの記事の中では、発表されている表面的な数値だけしか記載されていません。

たとえば、相続税を納めた人の、1人あたりの平均的な課税対象額は、1億1,426万円でした。前年度の2億を超えていた時に比べると、30%ダウンしたことになります。それでも1億円をゆうに超えていると考えれば、まだまだ庶民的な感覚の金額ではなさそうです。

しかし、12人に1人が対象になるほどの税制改正であったことを忘れてはいけません。相続税による税収は1兆8千億円あり、大事な税収の一部になっています。目論見通りに税収は27%、およそ4,000億円増えました。その対象となった課税価格は3兆円です。

それにしても国の予算と同じ兆の額は、庶民にとってはイメージしにくい数字です。ただもうしばらく、数字を追いかけることにおつき合いいただけると、一般的な負担が見えてきます。たとえば、こんな疑問が湧いてきませんか。もし、税制改正がなかったら、どうなっていたのでしょうか?

おそらく、それほど大きく変わったとは思えません。そして相続税対象で増えた課税額は26%で、それらを負担している課税対象者数は80%増ってどういうことなのでしょうか?単純に、増えた課税対象者4万7千人分の課税対象額が、3兆円相当であったと考えられます。

そこで対象者数で割ってみれば、6,580万円という数字がはじき出されます。これが課税対象者として増えた人たちの、平均的な課税価格ということになります。最初に相続税控除額の事例計算では、控除額が8,000万円から4,800万円に減額されたと書きましたが、この平均額である6,400万円と、似たような金額です。

この6,580万円というのは平均ですから、これより低い額で、5,000万円弱でも相続税が発生した人もいたはずです。前年の平均が2億円を超えていたことを考えれば、相続税は誰もが気にするような税金になりました。

💸小規模宅地の特例

相続の課税対象額については、土地・家屋・有価証券・預貯金等現金・その他と区分して公表されています。その比率にも傾向が見えます。たとえば有価証券は、その年の株価の動向に連動します。しかし、有価証券以外の項目は大きく変わるものではありません。

しかし、2015年のデータでは、土地対象額の比率が下がり、現金が増えています。これもやはり、同年の税制改正が原因と思われます。じつは居住用の小規模宅地の特例が改正され、これまで土地に対して減額された面積の上限が、240㎡から330㎡まで拡大されました。

ほとんどの相続課税対象者が相応の家に住んでいると考えれば全体の評価額を下げることになります。この小規模宅地の特例とは、同居している相続人がいれば、100坪までの土地の課税対象額が80%控除されるというものです。

居住用の土地がたとえ1億円の評価があっても、対象額としては2,000万円となりますから、あっという間に相続税は免除されます。ところが、配偶者以外の相続人が同居していない場合には、相続人もしくはその配偶者が、3年以上住宅を所有していないことが条件です。

たとえば、子ども家族と離れて暮らしている親が亡くなって相続が発生した場合、子ども家族が自分の家を持っていなければ、親が住んでいた家の土地の対象額が減額されます。子どもが家を建てたり、購入したりしていると、親の土地は全額が相続税の課税対象になります。

しかもこの時、子ども家族は夫婦のどちらが所有していてもダメです。夫が所有している家があれば、妻の実家に相続が発生しても減額されないということです。

💸土地と家屋の評価額

2015年の税制で増えた課税対象者の平均である6,580万円を、資産区分別の比率で割れば以下の通りです。特に家屋の課税評価額の平均は、350万円ほどの金額です。家屋の評価方法を見ても、これ以上下がりようがないほどの金額です。

家屋はどんなに古くても、毎年支払っている固定資産税の評価額が、最低限の家屋の相続税評価額となります。親の住んでいた家が古く、相続はかからないであろうと思っていた人も、課税対象になるのです。

これまでの相続税制では、土地や建物を多く持つ資産家が対象でしたが、2015年の改定以降はこのように一般的な人たちまで裾野が広がりました。

💸相続税と新築

こうした対策の一環として、土地や家屋の評価額と預貯金とのバランスを考慮して、あるいは上手に資産名義を工夫して、既存住宅の建替えを検討する人が増えています。

中でも、二世帯住宅は絶好の節税対策です。そして、子ども家族も新居を検討する時には、親の相続のことも考えておかなければなりません。親の居住する土地評価額の80%減額が受けられなくなる可能性があります。

その意味では、積極的に住宅資金贈与を受けることも、相続税対策になることなのです。家を建てることや購入する時には、夫婦の両親の資産状況を知っておく必要があります。

逆に子ども家族が新居を計画するのであれば、親として、自分の資産状況を調べておくことも大事です。あとは土地や建物の評価額が、おおよそどのような仕組みになっているかを知れば、預貯金や有価証券などを足せば想像できます。土地や家屋の評価額の概要がどの様になるかを最後に表記しておきます。

追記

・2015年1月1日より大きく改正された相続税につて、新しい税制下での相続の実情が2016年12月15日に発表されました。小さなニュースとしてしか流れていませんが大きな影響があります。

・相続税といえば、これまでは資産家が対象。その所有する土地対策としてアパート建設が主流だった気がします。でも新税制下では一般の家庭にも広がります。

・相続税を払う必要になった対象者が増えています。その家屋の評価額の平均は350万円です。決して豪邸や新築に住んでいる人だけではありません。

・小規模宅地の特例という創造税法上の特典がありますが子供が家を手に入れることで親の土地の評価が下がらないことに注意すべきです。

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