おうちの話

地震に強い家・弱い家おうちのはなし127

安全な家はどのようにつくる?地震に強い家・弱い家

・熊本地震の現実
・どのように家は壊れるか?
・家の強さは計算されているのか?

東日本大震災から6年が経ちました。その間にも、熊本地震が起き、また新しい被害状況が生まれました。世界で起きているマグネチュード6以上の地震の5分の1が、日本で起きている現実を知れば、住まいへの地震対策を怠るわけにはいきません。

どんな家が倒壊しているのか?

地震が来て、最も恐れることは、建物が壊れることです。世界で起きている地震でも、真っ先に建物の崩壊がニュースになります。石や土で建造されている地域では、住宅などの耐震化が行われていないことが報じられています。

それに比べれば、日本には厳しい耐震の基準があります。それでも現実に、熊本地震では多くの家が倒壊しました。熊本地震発生後の調査結果は、日本建築学会の中で発表されています。もっとも被害の大きかった益城町周辺では、約500棟の家が倒壊もしくは大破という被害を受けました。

どのような家が、壊れたのでしょうか?この統計では、対象となる木造住宅を3つの年代で分けています。1981年5月以前に建てられた家と、それ以降で2000年5月までに建てられた家、そして現在までの家です。

わかりにくいので、おおよそ築36年以上の家、築16年以上~35年以下の家、そして築15年以内の新築の家と考えればイメージが湧きやすくなります。当然のことながら、この地域に建っていた棟数も違います。築15年以内の家は、全体の中では14%弱しかありません。

そして、この調査では、築36年以上の古い建物は半数が、倒壊もしくは大破という結果になっています。また新しくなるほど、大破した家は少なくなります。単純に考えれば、家は古くなるほど傷んで弱くなると考えたくなります。

もしくは、古い家ほど瓦を載せている家も多く、屋根が重たい家ほど倒れやすいという噂を聞いたことがあるかも知れません。しかし、この調査で調べていることは、このような原因とは違います。決して古い家や瓦を載せた家が、壊れやすいと考えているわけではありません。

じつは1981年と2000年は、地震に対する法律が大きく変更された年なのです。すでに35年以上も経っていますが、1981年は新耐震基準法が施行された年であり、2000年は現行の耐震基準が施行された年です。これらの法律が整備される前には、1978年の宮城県沖地震、そして1995年の阪神淡路大震災が発生し、大きな被害を受けました。

それから5年ほどの検証期間を経て、新しい耐震基準が制定されたのです。旧基準では、震度5強程度の中型地震で建物が損傷しないことを求めていましたが、1981年の新耐震基準では、震度6強~7の地震で倒壊しないという基準に変わりました。

そして、人の命を守ることが建物の大きな役割として位置付けられました。さらに、構造材の強度を確認し、倒壊につながる建物の変形量を計算するようにな した。この時にはじめて、震度7という地震の揺れが設定され、その震度7が2度も発生するという、気象庁始まって以来の地震が熊本地震だったのです。

今回の調査が行われた目的も、これまでに制定された耐震の基準が、どれだけ効果を発揮しているのかを検証するためでもあるはずです。そのように考えると、このグラフもすこし見方が変わってくるでしょう。

熊本地震の現実

耐震基準の移り変わりを見ると、築36年以上前に建てられた家には、慣例的には耐震性がないものとしています。熊本地震の調査で、半数が大破以上の壊れ方をした築36年以上の住宅の結果というのは、逆に、耐震性のない家でも、半数は壊れなかったということになります。

また築16年~築35年の新耐震基準時代の家では、大破以上の家が20%ほどまでに抑えられました。その意味では、厳しい耐震基準は効果を発揮しました。さらに2000年の平成の耐震基準なら、大破はわずか数%です。ところが、これも逆に考えなければなりません。

新耐震基準でも20%もの家が大破以上の被害を受けたということです。そして、平成の耐震基準でも壊れるということです。これが熊本地震の現実の姿です。ところで、日本にはどれだけの家があるのでしょうか。この熊本地震の被害を、全国に当てはめてみると、倒壊か大破する可能性がある家の数は、合計すると900万戸になります。

その家には2240万人が住んでいます。地震に強い家が本当に必要なのです。熊本地震以降は、家の強さを表す耐震等級が取り上げられる機会が増えました。耐震等級は1から3まで3段階あり、以下の通り定められています。

耐震等級1:建築基準法と同程度の強度
耐震等級2:等級1の1.25倍の強度
耐震等級3:等級1の1.5倍の強度

たとえば長期優良住宅の基準では、等級2以上が求められています。さらに等級3以上に強くすることも可能ですが、これ以上の等級は設定されていません。この耐震等級1と3の違いは、熊本地震では明らかになりました。

どちらも人の命を守ることは同じでも、その後使うことができない家か、住み続けることができる家であるかの違いです。地震で半壊になるのは、想像以上に大変なことです。地震当日は同じように、避難所に寄せても、翌日には家に戻れるのか、それとも先の見えない避難所生活を続けることになるかの違いがあります。

被災後の家に、危険マークの黄紙が貼られると自宅には戻れません。そこから始まる避難所生活の苦しみは、全壊した家族とまったく変わりません。それを考えれば、耐震等級3が標準と考える時代になっているのです。

どのように家は壊れるか?

地震による被害状況を調べると、家の壊れ方には共通点があります。2階だけが崩れ落ちることは稀で、1階が潰れて壊れるのが一般的です。この時に、柱が抜ける場合と、倒れる場合の壊れ方があります。その後者の倒れ方のイメージを、動画で確認できるようにご用意してみました。家は柱がないことには、建てられません。

しかし柱だけでは、横からのカがかかれば、すぐに倒れてしまいます。倒れないようにするには、柱と柱の間に、筋かいという斜めの材を当てて固定します。もしくは面材を張っても、横からのカに耐え柱は倒れなくなります。このような壁を、耐力壁と呼びます。これも同じように、上記の動画の中で確認することができます。

この時、筋かいの太さや、面材の種類、その止め方等によって耐力壁の強さが変わります。同じ枚数の耐力壁があっても、壁の強さが違えば、家全体の強さも変わります。そして建物全体で必要とされる耐力壁の量があれば強度が確保されていると考えられます。

これが、壁量計算と呼ばれる、家の強さを確認する手法です。もちろん強い壁があるほど有利であることは間違いありません。たとえば同じ耐震等級3の家でも、強い耐力壁が使われていれば、壁の量が少ないので間取りも自由になります。

ただ、耐力壁の量は足りていても、配置に偏りがあると、ねじれて壊れることが考えられます。そのためには、全体の耐力壁のバランスを取らなければなりません。こうした基本的な強度とバランスの基準を国が定めています。

どの建設会社が建てる住宅であっても、その基準を満たせば家の強度は確保されます。大きな地震が起きると、地震に強いことをアピールする住宅メーカーの広告が増えますが、その会社だけが強い家を作ることができるわけではありません。

家の強さは計算されているのか?

このように書くと、どの家もしっかり構造計算して建てられているように感じますが、そうとも言えません。じつは、2階建以下の木造住宅では、構造計算されていないことがほとんどなのです。

最も基本となる建築基準法では、第20条第1項に構造計算のことが定められています。構造計算とは次のものです。

・許容応力度等計算
・保有水平力計算
・限界耐力計算
・時刻歴応答解析

住宅建設にあたっては、基本的には確認申請を必要としますが、じつは構造計算がなくても確認申請は通ります。長期優良住宅では、耐震等級2以上が求められますが、じつは構造計算が行われているとは限りません。

施工令にある技術基準の仕様規定に適合してさえいれば、長期優良住宅の耐震等級が得られます。この仕様規定はいわゆる簡易法であり、構造計算ではないのです。

さらに四号建築といい、下記の建築基準法第6条1項四号に該当する木造住宅は、構造計算が義務づけられていません。しかも、構造に関わる検討書や図面の提出も求められず、チェックもしていないのが現状です。

・木造で2階建て以下
・高さ13m以下
・延べ床面積500㎡以下
・軒の高さ9m以下

もちろん、法律で定められていることなので、構造計算をしていなくても違法ではありません。先の熊本地震の調査で、築15年以下の平成の耐震基準にあった家でも倒壊している事例があるのも、このような背景があることも考えられます。

いずれにしても、「構造計算したい」と依頼すれば良いことです。そして「許容応力度で計算しています」と回答があれば、安心できるはずです。実際に、木造でも3階建では許容応力度計算が義務となっています。住宅は何度も建てられるものではありません。将来の資産価値を考えても、許容応力度計算をしておくことをお勧めします。

今住んでいる家

これから建てる家に、構造計算をすることは依頼すればできることですが、地震対策は既存住宅でも必要とします。国民の命を守ることは、大事な国策のひとつとして、既存住宅の耐震化も強く推進されています。耐震性を確保する法律として耐震改修促進法などが施行され、耐震診断や耐震設計、そして耐震工事にも補助金の制度があります。

さらには40歳未満の既存住宅購入者が、耐震などの改修工事を行う場合にも、補助金制度を新設しています。ただ、今住んでいる家には、できることが限られています。建物が古くなるほど、建設時の図面が残されていることも少なくなります。

こうした状況を踏まえた上で、耐震化を進める仕組みも整備されてきました。そして既存住宅の耐震改修でも、同じように耐力壁の量とバランスが大事な要素です。このような耐震改修工事を進めるのは、内装や設備などを扱うリフォーム店では難しいことです。

また大手メーカーが率先して扱っているわけでもありません。耐震の技術力を持ち地域に根ざした建設会社が、この役割を果たそうとしています。地震のことは、お近くの建設会社に聞いてみてください。