おうちの話

地球環境に貢献する家おうちのはなし128

住宅は第2の森地球環境に貢献する家

・森林率で見る日本の資源
・家に蓄えられたCO₂
・家を作るのに使うCO₂

日本の住宅には、たくさんの木が使われています。こうした木材の多くは、自然の中で育ち、伐られて
使われているものです。地球環境を破壊しているようにも思えますが、逆に上手な使い方をすれば、地
球環境の保護に大きく貢献することができます。木造住宅と地球環境の関係を研究してみました。

日本は資源国

日本を訪れる外国人の数は毎年のように増え、2400万人を超えました。おもてなしのサービスやさまざまな種類の食べ物、そして衛生的な環境など、満足度も高くリピーターも多くなっています。訪れた外国人には、日常を暮らしている私たちが気づかない日本の魅力を感じているようです。

その中の1つに、深い緑に包まれた自然の風景があります。飛行機で山の上を飛び、新幹線で陸を駆け抜けても、私たちには普通の風景にしか見えないのですが、外国人にはどうやら違う景色として見えているようです。逆に、海外旅行を紹介するテレビ番組などを見ていると、風景の違いがわかって来ます。背景となる山々に、樹々が生い茂っている風景を見ることは、意外と少ないものです。

先進国の多くでは、人間の食糧生産地としての開拓が進み、自然の森は失われてしまいました。北緯の高い国々には、比較的種類の少ない針葉樹が育ち、さまざまな常緑広葉樹や落葉樹が自生する日本の森に比べると、緑の色にも華やかさがありません。標高が高い地域では、国別では、日本は68%でフィンランドに次いで森林率の高い国です。

フィンランド全国土の中では、年間に8000万㎥の木材蓄積量が増え、そのうち6000万㎥を伐採しても、2000万㎥の森林が育っています。同国では、国業として森林を育成し、世界の国々に木材を供給しています。日本の森林率はフィンランドに続き、都道府県の中ではフィンランド以上に森林を抱えた県もたくさんあります。木材を輸出しているロシアでも、国土に占める森林の割合は半分弱となっています。

同じように木材を輸出しているカナダは、森林率34%と低く、アメリカも同様です。日本でも最も森林率が少ない県とほぼ同じくらいです。北米大陸も西部劇で馴染みのある西部の山岳地帯はグランドキャニオンに代表されるような砂漠地帯です。さらに穀倉地帯として開拓されているので、森林は少ないのです。

そして、オーストラリアや中国も、砂漠化に悩んでいる国です。砂漠化とは別に森の開拓が進んだイギリスやオランダには、森林は1割強ほどしかありません。日本の自然は、私たちが海外で感じる壮大な大自然ではないかもしれませんが、実は大きな資源であることは間違いありません。

近年にできた日本の森

世界に誇るほどの森林を抱えている日本では、樹木はどのような構成になっているのでしょうか。5年ごとに調査されている森林蓄積量の内訳を、天然林と人工林で分けたものです。見ての通り、天然林の蓄積量はあまり増加していません。それは自然の中では倒木更新しながら、樹木が世代交代して森が続いているからです。

一方、人工林の方は、生長するほどに蓄積量は増加しています。戦争で疲弊した国土に植えられたヒノキやスギは、着実に生長して十分に建材として使えるだけの樹木になりました。この蓄積量の変化を見ると、年間に約1億㎥増加していることになります。

日本の国土にある樹木の1本1本がそれぞれ年輪を1つ増やした総合計が1億㎞ということです。先のフィンランドよりも多いのです。平均的な住宅で使われる木材の量で換算すれば、400万棟もの家が建つ量です。2017年の住宅着工数の公表は90万戸ですので、どれだけ多くの木材が蓄積されているかがわかります。

京都議定書からパリ協定

地球温暖化を防ぐために、CO₂の排出量削減に各国で取り組むことになっています。その目標設定は、京都議定書からパリ協定へと移りました。この中で、日本の取り組みの中には、森林によるCO₂吸収が見込まれています。

日本は2013年当時のCO₂排出量から25%の削減を目指し、3億800万トンのCO₂削減を約束しています。産業界も民間もさまざまな手立てを凝らして、この約束を守らなければなりません。
年間1億㎥の木材蓄積量をCO₂に換算すると、約7300万トンとなります。

日本のCO₂削減約束のおよそ4分の1が、森林で達成できることになります。ただ、それでは森林の多い日本だけが有利になってしまうので、森林対策を実施している分として2800万トンを計上しています。この事実を知るだけでも、どれだけ森林が地球環境を維持するために大切なものと考えられているかがわかります。そして日本が恵まれた国であることもわかります。

家は第2の森

ところが、森林も若いうちはCO₂削減に貢献できますが、樹齢が重なるとCO₂吸収量も鈍くなります。ですから時には伐採してあげることも大事なことです。特に人工林の樹木はその対象となります。ただ伐採しても、すぐに燃やしたり廃棄されたりするのではCO₂は大気に帰ってしまいます。

できる限り長く使うものに利用することが大切で、木造住宅は最も有効なものです。樹木は自然の中で生長している時も有用ですが、伐採して木材になっても人間にとっては有用です。森で生きていた樹木が、人の町で木材として生かされます。

それを考えれば、木造住宅が並び立つ町の風景は、樹木が並び立つ森林にも似て、炭素を蓄えた第2の森の風景として見ることができます。そうであれば木造住宅を大切にすることは、それだけでも地球環境に貢献していることになります。せめて木材が育ってきた40~60年の長期にわたり、家を守り続けられればと思います。

家に蓄えられたCO₂量

では、実際に家には、どれだけの炭素量が蓄えられているのでしょうか。一般的な住宅では、およそ23.7㎥の木材が使われているといわれます。量として最も多く使われているのは、梁などの横架材です。下の階に有効な空間を作り床を支えるためには、それなりに大きな材を必要とします。

横架材の割合は、1棟の家のおよそ35%に当たります。その次に、柱が17.3%あります。他に土台や小屋組など、基本的な家の骨組みであるスケルトン部の合計が65%を占め、約15㎥ほどあります。これらの木材のほとんどは、家が建っている間は残されてゆくものです。その他は間仕切り壁や下地材などです。

この1株に使われている木材には、CO₂に換算してどれくらいの量が含まれているのでしょうか。23.7㎥の木材は、比重から重さがわかります。木は水よりも軽く、樹種によっても比重は違います。スギは軽く、マツは少し重たくなります。ヒノキ程度の比重0.4とすれば、

23.7×0.4 =9.48㌧

木材の成分の中で半分が炭素です。

9.48÷2=4.74㌧

この炭素量から、CO₂の量を算出すると、

4.74㌧×(44 / 12) =17.38㌧

1棟の家には、17トンものCO₂が蓄えられているということになります。この量は、1ヘクタールの水田が1年間に取り込むCO₂量と一緒です。1ヘクタールは100メートル四方ですが、身近な小学校のプールで数えれば30箇所分となります。

水田よりもCO₂を固定する能力が高いスギであれば、プール8つ分の広さのスギ林に相当します。家を守り続けることは、これだけの林を守り続けることと同じことなのです。

家を作るのに使うCO₂量

さらに材料として作られる過程でも、CO₂が排出されています。木材でも天然乾燥であればCO₂の排出量は少ないのですが、人工的に乾燥させるとなると熱源が要るので排出量が多くなります。

さまざまな材料の製造時のCO₂排出量を掲載してみました。サッシに使われるアルミは、木材の200倍以上です。現在では純粋に天然乾燥した木材は手に入りにくいので、人工乾燥した木材が使われることが多くなっています。

こうしたことから、木造住宅と鉄骨造、鉄筋コンクリート造の住宅で、製造時のCO₂排出量を計算してみると、次のグラフのようになります。

炭素放出量(床面積136㎡あたり)

鉄骨造 14.743kg
RC造 21.814kg
木造 5.140kg

木造住宅でも、基礎には鉄筋コンクリートを使わないわけにはいきません。サッシもアルミニウムでできています。それでも、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べると、半分から4分の1程度のCO₂排出量で木造住宅はできあがっています。木造住宅は、やはり地球環境に貢献する家なのです。

どこで育った木か

ところが日本では少し見直さなければいけない側面もあります。それは国産材の使用率が高くないことです。遠い国から木材を運べば、それだけエネルギーを消費してしまいます。こうした指標は、ウッドマイレージとしてまとめられています。

ウッドマイレージとは、使用している木材の量と輸送距離を掛け合わせたものです。輸入材を多く使っている日本のウッドマイレージは、384億キロメートルにもなり、アメリカやドイツとは比べることもできないほどです。はじめに書いてきた通り、日本は世界の中でも有数の森林資源国になっています。

この資源を有効に活用しない手はありません。しかも伐採して森林を更新して行くことが、環境に貢献することです。そしてしっかりとしたスケルトンで家を建てて守ってゆくことも地球環境に貢献することです。それが国産材であれば、最も理想的なことです。家と地球環境問題は、切っても切れないほど、縁の深いものなのです。

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