おうちの話

家と太陽おうちのはなし140

日当たりの良さを求めて家と太陽

・家と方位
・太陽の動き
・太陽の効能

日当たりの良いというのは、誰でもが望む理想の家だと思います。日当たりが良いといえば、当然、家は南向きと考えます。しかし南向きのことを考えただけでも、住まいづくりの知恵の中には、奥深い話がたくさんあります。家と太陽のことについて考えてみましょう。

🏠家と方位

地球に生きる生命のほとんどが、太陽の恩恵の下にあります。なによりも樹木は光合成によって生長し、それを木材として活用して私たちは家を建てています。太陽の光によって温かさを得、太陽の光が人の健康を支え、時には気持ちにまで影響を与えています。

そして太陽の光が強い南向きは、最も大切な方角と考えます。「天子は南面す」と聞かされ、その原点でもある中国の易経に「聖人南面」とあるのも、太陽をこの世の中心と考えてきたからでしょう。電気文明が発達して、どんなに24時間眠らない生活が生まれても、少なくとも1週間という単位で見れば、太陽と向き合う時間はかならずあるものです。

たとえば、休日の過ごし方を深夜に当てる人はおそらくいません。だからこそ、心身を休める場である家には、日当たりの良さを求める人は多いのでしょう。土地を求める時はもちろんのこと、家をプランニングする時にも、南の日当たりのことは気になると思います。

しかし、ちょっと意外なのは、海外の一般住宅では、あまり南向きを気にしているようには思えないことです。そもそも窓が小さいこともありますが、アメリカの分譲地などでは方位に関わらず、前面道路に開放された住まいづくりになっています。

南面よりも、正面のファサードを意識しているようです。同じように洋の東西を問わず、都市型の家では道路に向かって開かれているのが普通です。宿場町などの街道筋では、隣接家屋との間に窓をつくることはできません。また、日本庭園でも多くは南向きに家は建てられていません。

有名な桂離宮は、登る月を池の水面に映しながら眺めるように造られているので、東に向いています。さらに庭園内にある松亭、貴花亭、園林堂なども南には向かず、そればかりか北に向いて建てられています。それは庭の眺め方から考えられているものです。植物は太陽の光を最大限に受けようと、葉を太陽に向けています。

これを葉表といい、南側から眺めることで、庭の樹々の葉の美しい姿を見ることができます。逆に南に向いた窓から庭を眺めれば、葉裏を眺めることになってしまいます。庭園においては、人よりも庭や植物の方が主人公なのです。逆に、日本で築100年以上経つ古民家を見ると、南に向いた家がほとんどです。

その家は東側に土間や馬屋があり、広縁を通じて西に座敷が続いています。その基本は、ほぼ日本全国に共通しています。どの地域にも、似たような家が建てられていたことから、家相にも通じ、古人が方位に対する強い意識を持っていたことを感じさせられます。その大きな要因に、太陽の動きがあることは間違いないでしょう。

🌞太陽の動き

春分や秋分の日には、太陽は東から昇り、真西に沈みます。そして夏至と冬至の間で毎日少しずつずれています。これらをずっと観察していた古人には、自然の不思議な規則性が気になって仕方がなかったことでしょう。こうした変化は、地球の地軸が234度傾いていることから起きています。

地軸とは、地球が自転している中心軸です。一般的な地図は、地軸の真北を上にして描かれています。ところが地軸の南と、方位磁石の指す南は一緒ではありません。地軸の北を真北、磁石の北を磁北といいます。しかもこの磁北は場所や時間によって変化しています。日本ではおよそ4~7度、西に偏っています。

太陽が真南に昇った時に、太陽高度は1番高くなります。この時を、南中時といいます。ただしお昼正午の太陽の方向が真南、つまり南中時とは限りません。日本の標準時として定められている明石では真南ですが、明石より東側の地域ではすでに南中時は過ぎ、西に傾いています。

逆に明石より西では、まだ南中時にはなりません。また、南中時の1番高い太陽高度は、その土地がある緯度によって違います。たとえば、北緯35°では、春分秋分の日の南中時の太陽高度は、55°になります。

90° – 35° = 55°

さらに地軸の傾き分の変動があるので、夏至には78°、冬至の太陽高度は32です。

55° + 23.4° = 78.4°
55° – 23.4° = 31.6°

このような太陽の動きに合わせて店の長さを決めれば、夏には日差しが入りにくく涼しい家になり、冬には日差しが入る温かい家になります。たとえば上の太陽高度で、2.2mの高さの掃き出し窓であれば、窓上部の庇の長さを46cmにすれば、夏至の太陽高度の時には日差しは入らなくなります。

ただし、窓の上に壁があって窓と底が離れるほど、さらに長く庇を出す必要があります。

🌞理想的な南向き

では、もし敷地が広く、自由に方位を選んで建てられるとすれば、真南に向けて建てるのが理想的なのでしょうか。太陽のことだけを考えればそれで良いのですが、家のことを考えると少し理想も変わります。太陽の高度が季節によって変わるように、日の出と日の入りの方向も変わります。

夏には真東より北に寄った方角から太陽」は昇り、冬には南に寄っています。夏至や冬至ではその角度は、およそ30°ほどにもなります。建物の東面、南面、西面は常に日が当たる時間がありますが、冬には北面は日が当たることはありません。夏にも日の出と日没時にわずかに当たる程度です。太陽の光には、消毒や乾燥させるほどのエネルギー量があります。

できれば少しでも太陽高度が高く、エネルギー量が大きい時間帯に建物の北面にも太陽光を当ててあげることは、建物にとっても大切なことです。そのためには、真南に向けるよりも、10°~20°ほど方位を振って建ててあげる方が良いといわれています。では、東と西と、どちらに振るのが理想的なのでしょうか。

🌞太陽の効能

太陽はおよそ24時間で回っています。厳密にいえば、地球が自転している速度を24時間と人間が定義しているのですが、こうした自然の中の時間には不思議なことがあります。その良い例が、私たちの体内時計の仕組みです。じつは人間の体内時計では、1日はおよそ25時間でセットされています。

これを概日リズム、あるいはサーカディアンリズムといいます。24時間ではないのです。もし時計がなく、太陽も見えない空間で過ごしていれば、毎日1時間ずつずれてしまいます。このリズムは睡眠のための仕組みで、毎日リセットをすることで睡眠が保たれます。そのリセットは、目覚めた時に光を浴びることで行われます。そして、その日の夜に暗くなると眠くなるように仕組まれています。

つまり、良い睡眠をとるためには、しっかり朝日を浴びることが大事なのです。やはり、私たちの身体は、太陽とは切っても切れない関係にあるのです。こうした人体のリズムを考えると、家は少し東向きにして午前中の光を取り込むようにするのが理想的なのかもしれません。

🌞太陽の家

確かに広い土地に自由に建てられれば、太陽の動きを捉えた理想の家ができるかもしれませんが、現実は厳しいものです。南抜きの土地とは限りませんし、南面に建物が建っていては、日差しを確保することもままなりません。建物の方で太陽を取り込むための工夫を重ねる必要があります。

そんな時にも、いくつかのポイントがあります。たとえば、家を建てる敷地の中でいちばん日当たりが良いのはどこでしょうか?一瞬、南側と答えたくなりますが、じつは北側です。南側に充分な庭を確保すれば、たとえ南に家が建っていても、日当たりは良くなります。敷地の北側に風呂や洗面などの水回りを配置すると、リビングやダイニングが南に出てきて、結果的には日当たりが悪くなります。

敷地の中で最も日当たりの良い北側に、最初にリビングを配置して、その周囲に水回りを設計すれば、太陽が入りこむ家になります。それはつまり、中庭のある家です。中庭はまるで、空に開かれた窓のようになります。京都の町屋なども、こうした中庭をつくることで、家の中心に太陽を届かせることができています。もうひとつのポイントは、太陽の光は、高いところほど当たります。

たとえば、1階よりも2階です。たとえ南面に2階建が建っていても、自宅の2階から見れば、隣家に平屋が建っているのと同じことです。日当たりのすぐれない敷地では、日の当る2階で眠り、起きてから日当たりの悪い1階に降りてくることになりかねません。太陽が昇る昼間に過ごす空間こそ、2階に配置する方が合理的といえます。つまり、2階をリビングにするのです。

せっかくの南道路で日当たりの良い敷地であっても、道路を行き交う人の視線を気にして、レースのカーテンを閉めて過ごしている家庭がほとんどです。南向きに大きな窓をとっても、生かされていないのは残念です。通行する人の視線が届かない2階であれば、カーテンを閉めることなく、めいいっぱい太陽を取り込むことができます。2階よりもさらに日当たりが良いのは、屋根です。

この屋根に太陽光発電を搭載すれば、屋根が収入を生み出してくれます。普及に伴い、余剰電力の買い上げ金額は低下しましたが、それでも買うよりも高い電力価格で売ることができます。また、買取価格が低下した分、設置価格も安くなりました。太陽光発電が、家計の応援になることは間違いありません。

そしてなによりも、自宅でエネルギーを使う分以上に、エネルギーを生み出していることは、地球環境に貢献していることに他なりません。太陽は、どの敷地にも平等に光を降り注いでくれています。その光を最大限に活用する家を、しっかりと考えてみてはいかがでしょうか。

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