おうちの話

モノを収めるコツおうちのはなし141

収納のつくり方とつかい方モノを収めるコツ

・モノがあふれた暮らし
・収納場所「クラ」
・収納のコツ

収納が足りているのと不足しているのでは、暮らしが大きく変わります。収納が少ないと、さまざまなところで物があふれ、美しい暮らしから遠ざかってしまいます。でも、収納は多くあればあるほど良いのでしょうか。収納の仕方にも、工夫の余地はたくさんあります。

📚モノがあふれた暮らし

家は空間があるだけでは暮すことはできません。それぞれの部屋に、さまざまなモノがあってはじめて暮らしもなりたちます。それにしても、家にはどれだけのモノがあるものなのでしょうか。下にあるのは、家を新築して1年経つ家庭に、どれだけの所有物があるかを調査したデータです。

新築世帯の主な所有物

食器棚・本棚 90.5
石油ファンヒーター 84.6
洋服タンス 84.0
化粧台 76.6
観葉植物 75.5
ホットカーペット 72.8
こたつ 70.7
オーディオセット 64.1
ソファセット 63.3
屋外物置 63.1
大型冷蔵庫 59.7
つくり付け収納 49.0
仏壇・神棚 43.4
ピアノ 43.1
衣類乾燥機 37.1
絵画 35.1
室内運動器具 16.6
家底用カラオケ 4.6

(2000年調査)

 

想像以上の割合でモノがあるものです。

洋服ダンスや食器棚・本箱などは、持っていない家庭を探す方が大変なほどです。およそ半数の人が造りつけの収納を設置しているのにもかかわらず、やはりタンスや食器棚・本棚はあります。でも、これだけ多くのモノがあることは、生活が豊かな証拠でもあります。おそらく、日本は世界の国の中でも、家庭の中にモノがたくさんある国に違いないでしょう。日本は世界の国々が先進国として認め、所有をかきたてるだけの商品開発力もあります。さらに、それを買えるだけの経済力もあります。

また、日本には文化的な要素もあります。たとえば「もったいない」という文化を持つ国だからこそ、物を大切にして残しているといえます。それだけではありません。食器などは、そばやうどんを食べる時と、ラーメンを食べる時、もしくはスープを飲む時と味噌汁を飲む時で器を変えて、食を楽しみます。この食文化の違いが所有している食器の数の違いを生み出します。間違いなく世界の中でもトップクラスの食器の量があるでしょう。

📚モノのある場所

では、こうしたモノの数々は、どのように収納されているのでしょうか。その答えも、同じ調査の中にあります。下記のデータからは、収納されずにあふれ出た物が、部屋の中に雑然と置かれていることが見られます。しかも、このデータは長年住まわれている住宅での状況ではありません。新築して暮らし始めてから1年目の家庭のデータです。

服が収納に収まりきらずに困っている30.3%

玄関には下駄箱に入りきらない靴が置いてある27.2%

掃除機は廊下や部屋の隅に置いている24.1%

本屋雑誌を部屋の隅に積んでいる21.0%

きっと建てるまでは、新しい美しい暮らしを夢見ていたはずですが、この現実を見ると違うようです。確かにすべての収納を確認して家を計画し、暮らし始めているわけではありません。さらに買い足してゆくものもあります。捨てるのが追いつかなければ、モノは増える一方です。

衣服や靴などは、消耗品として買いますが、少しでも使えると思うと、捨てることは後回しになってしまうこともあります。また日常的に使うモノほど、すぐ次に使うことを考えると、いちいちしまうことが、つい億劫になることもあります。せっかく収納を作っても活かされません。

そのような実態を感じられる調査結果になっています。残念ながら収納を増やせば増やすほど、収納する物も増えるものです。家に必要な収納の問題は、単純に収納量を確保するだけの問題とは思えません。家の収納を上手に使いこなす術とは、どのようなものでしょうか。

📚誰がモノを増やしているのか

それにしても、どうして生活の中にはこんなにもモノが多いのでしょうか。それほど意識していなくても、いつの間にか、増えてしまっているように感じます。毎年のように、少しずつ新しい機能が追加された家電製品が発売され、まるで古い製品を持っていると型落ちしているかのように感じさせられます。まさに、モノ消費の文化の渦の中に巻き込まれている感じです。

でも、かならず誰かが決断をして、これらのモノが増えているはずです。少し冷静になって、一度、誰が欲しがったものなのかを確認して見る必要があるかもしれません。たとえば子どものいる家庭では、子どもの物は驚くほど増えてゆくものです。洋服だけでも成長に合わせて、買い替えてゆかなければなりません。わずかしか履いていないのに小さくなった靴は、捨てるのにもったいなく感じるものです。

また、知育のためのオモチャは、贈られることを含めて年々増加する一方です。でも子どものモノは仕方がないとしましょう。子どもと同様に物を増やしているのは、父親であることが多いようです。このような意見は子育てママさんのグループインタビューで聞かされました。物を捨てることも、男性の方が女性よりも不得手であるといいます。さらには、男性の方が衣装持ちであるケースも多く見かけられます。

収納術などの話題は、女性誌などでも多く取り上げられていて、女性が興味を持つ話題のように思えます。たとえ女性がモノを片づけるのが得意であっても、モノを増やす男性がいては、やはり収納の問題が残ります。

📚日本の家の収納

そもそも日本の家は、それほどモノに溢れる家ではありませんでした。数々の便利なモノが、日本人の生活スタイルを大きく変えたのです。家具を置かなければインテリアが完成しない洋間とは違い、和室は家具がなくてもデザインが整っている空間として、欧米の人たちの目を引いたこともあります。

そして日本人には、四季折々に節句などの室礼を部屋に飾り楽しむ文化がありました。桃の節句や端午の節句などに、人形飾りを出してきて設えます。こうしたライフスタイルを支えていたのは納戸や蔵です。

ところが洋室が普及するにつれて各部屋には目的が生まれ、モノがたくさん置かれるようになります。家族の個室はその代表です。この納戸と個室のライフスタイルの違いは、いわば集中収納と分散収納の違いです。集中収納を手に入れるのには、基本的には間取りから考えなければなりません。一方、分散収納は家具によって対応することができます。そして、さまざまな収納家具が売られています。

どちらにしても、住まいの収納を考えるときには、先に集中収納をしっかり確保しておくことから始まります。個人に任せた分散収納よりも、集中収納では、衣替えのような家族のイベントをつくることで整理する機会が生まれる利点もあります。ただし、手を入れない蔵や納戸には、厚く埃をかぶったモノが鎮座することもあります。

📚収納の場所「クラ」

家に集中収納があると、なによりも暮らしている部屋が少しでも片づきます。たとえ室礼を楽しむのではなくても、集中収納はかならず役立つと思われます。集中収納といえば、その代表は蔵です。

じつは、日本語で「クラ」に使われる漢字には、「蔵・倉・庫・座」の4つがあり、それぞれの文字が集中収納としてのイメージを表しています。


は草かんむりの下にあり、土に固められた土蔵のイメージで宝物などを隠す場所です。たとえば家の中では床下につくる収納です。


は高床の屋根の下につくる米倉のイメージで、穀物を貯蔵する場所です。家の中では小屋裏につくる収納です。これらの集中収納は、該当する床階の2分の1以下であれば床面積には計算されないルールになっています。その条件は、天井高を1.4m以下にすることです。また、同様に1.5m以下の天井高であれば、税法上も面積には算定されない空間となります。


は文字を見た通りにガレージのイメージで、製品などを置く場所です。このような場所を好むのは男性であり、収集してきた物に囲まれて、至福の瞬間を過ごす場所になることもあります。ガレージについても、家に組み込めば延べ床面積の5分の1までの面積が緩和されます。つまり、定められている容積以上の家が建てられるのです。床下・小屋裏・ビルトインガレージの収納は、居住空間を狭くしなくてもつくれる集中収納となります。


は最後の「クラ」で、胡座(あぐら)の「クラ」です。物があるべきところにあることを表しています。世界の屋根と言われるヒマラヤの語源も、「雪の座」という意味です。例えば、壁に絵画を掛けていれば、その壁は絵のあるべき場所としての「座」となります。現代流にいえば、「座」は見せる収納と考えても良いかも知れません。節句の時に、人形飾りを床の間の前に置くのは、まさに「蔵(くら)」から出して「座(くら)」に置くようなものです。

📚収納のコツ

「蔵・倉・庫」を上手に使うためには、実は魅せる収納である「座」が大切な役割を果たします。 「座」にある物は、今、生かされている物ですが、「蔵・倉・庫」にある物は、いつか忘れ去られてしまう可能性があります。そして、「座」にある物を定期的に設えることは、「蔵・倉・庫」にある物を整理することにつながっています。

つまりモノの整理の手順は、表に出ている物のあるべき場所をしっかりと決めることから始まります。これは、各部屋にある分散した収納にも通じるコツになります。さらに収納は、奥行から考えることも大切なコツのひとつです。最も単純な例は、家具屋にある収納家具を見ればわかるります。ほとんどの家具の奥行はおおよそ3パターンしかありません。

その奥行は、60cm、45cmと、薄型の30cmです。それは収納するモノが、ほほこの奥行きで収まるということを表しています。逆に、設計段階で作られることの多い一般的な奥行90cmの収納は、布団を入れる他は意外と使いにくいと感じている人が多いのです。それを考えれば、間取りで収納を検討する時にも、収納家具で考える方が合理的です。

さらには、ちょっとした扉や仕切りや棚を、後からつけるだけでも収納はできます。小さな図面の上であれこれと収納のことを考えるよりも、じっくり暮らしながら考える方が得策だということです。それは集中収納の中を整理する時にも通じます。たとえ1間奥行の収納でも、工夫して家具を組み合わせれば驚くほどの収納量になります。

そして最後のコツは、まったく動くことがなくなったモノには、捨てる決意が大切です。これができない限りは、収納はあればあっただけ、常に足りないと感じてしまうものにしかなりません。「フランス人は10着しか服を持たない」という本が発売され話題にもなりました。

そこに書かれているテーマは、「暮らしの質を高める秘訣」です。このタイトルを見るかぎりは、決してモノが多いことが、質が高いことではありません。断捨離という言葉もあります。モノを収めるのは家のつくりだけの要因ではなく、暮らし方の中にこそあるものではないでしょうか。

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