おうちの話

住まいは巣まいおうちのはなし144

子どものための環境づくり住まいは巣まい

・子育てのための家
・秀才か天才か
・子どもの目、子どもの動線

住宅取得の理由を聞くと、最も多いのは、子どもや家族のためという答えです。現在の生活ではなく、家族の未来を考えるからこそ、長い返済を抱えることを覚悟できます。

そして子どもにこそ、無限の未来があります。家をつくることは、子どもを育てるための環境づくりであり、少しでもできる工夫とは?

🐓住まいは巣まい

日本の最も古い書物である「古事記」の中で、「すまい」という記述に、「巣」の文字が使われています。もともと、「万葉集」や「日本書紀』にも万葉仮名は使われていました。しかし、本来の「す」という発音のための漢字であれば、ひらがなの原形である「寸」や、カタカナの元になった「須」が使われても良いはずです。

他にも、周、酒、州、栖などたくさんの「す」が万葉仮名としてあります。その中で「巣」の文字を選んで表記しているのは、単なる音としてではなく、訓としての意味である住まいの意義を考えた上で、書かれていたのはないかと思います。「巣」の字は、鳥が雛を育てる場所を象形している漢字です。つまり、住宅そのものが、子育てのためのものだと考えているのです。

でも、そんな大昔から、現実に子ども部屋があったかというと、そんなはずはありません。ただ、子ども部屋があることが子どものための住まいであるとは限りません。家を構えることが、子育てを考えることだったのです。

👥子ども2人で家を

でも、『古事記』のような古い文献に頼るまでもありません。住宅金融支援機構が、住宅ローンを組んでいる家族に、実態調査を行った中でも明確に現れています。家を取得する理由については、経済的な理由や、生活・環境の質を向上させることよりも、ライフステージの中で子どもの成長や結婚そのものが動機となっている割合が最も高くなっています。

それは日本だけではなく、欧米でも同じことです。フランスの国立統計学研究所(INED)の調査には、もっと面白い結果が出ています。住宅融資を受けながら新しく住宅を取得する家庭の90%が既婚夫婦であり、家を買おうとするのは、ライフスタイルの中でも特に結婚や子どもの誕生に関わるとしています。さらに中流階級や裕福な階級の住宅所有者の割合は、多くの場合、子どもの数と比例していると分析されています。

つまり、子どもの数が増えるほどに、住宅を新しく取得しようとするのです。ただし中流階級以下では、子ども2人の場合に住宅所有率のピークができます。子どもが多くなるほど負担が増えるので、住宅取得の余裕がなくなるのです。こうした分析は、フランスの社会学者が実施調査したもので、社会階層別のデータがあるからこそ、わかることです。

とても簡単なことなのですが、なかなか実証するの難しいことです。では、「巣まい」としての、家づくりにはどのような考え方があるのでしょうか。

👥秀才か、天才か

ノーベル賞を取るような学者も、歴史に名を残してきた住人にも、間違いなく育ってきた家があります。家族や周囲の人々に影響を受けることもありますが、育ってきた家も、少なからずの影響を与えてきたと思えます。そんな家と子どもの関係についての興味の湧く話があります。

アメリカの、エリート高校に勤める女性教師の体験発表会での報告です。教えてきた子どもたちの個性が、大きく次の2つに分かれるという報告でした。性質には偏りがなく、どのようなことでも平均的にできるのですが、独創性や行動力に少しだけ欠けている子ども達が一方です。

もう一方は、得意科目があって才能を発揮しますが、苦手な課目もあります。個性も発揮され実行力もあるので魅力的ですが、逆に従順ではなく危険性もはらみます。いわゆる、前者が秀才肌で、後者が天才肌の子どもで、日本の学校の中でもいそうな感じがします。さらに追加調査も行われ、後者の天才肌の子どもは、失敗した例もありますが、大きな仕事をして、楽しく生きているといいます。

この調査で興味を引くのは、じつは2つのエリートの子ども達が、幼少時代を過ごしてきた家によって決まってきたという点です。その家というのは、「家庭」ではなく、「家のカタチ」によって違うというのです。前者の秀才肌の子どもは、近代化された家に育ち、後者の天才肌の子どもは古い家に育ったというのです。

古い家には空想をかきたてるところがいっぱいあって、独創的で個性のある子どもを育て、機能化された現代の家では、環境に順応する子どもが育つようになります。アメリカでの発表当時は、国が独創性を失いつつあると危機感を抱いていたようです。もちろん、どちらの子どもが良いのかという話でもありません。

👥子ども目線

昨今、中央教育審議会の「脱ゆとり」の教育方針がニュースになっています。これまでにも、「詰め込み」から「ゆとり」へと変わり、今は「脱ゆとり」として、考える力・生きる力を養うよう改革が進められています。多様化を認め、個性を伸ばす方針は、天才肌の子育てに近いのかもしれません。

しかし、単純に古い家が良いという話でもありません。それよりも逆に、もっと、子どもの目線に沿って家を考えておく必要があるということです。生活の主体である親は、比較的、合理性で家の是非を決めようとするものですが、改めて子どもの目線で感じてみましょう。

家事動線を考えるのと同じように、子どもの動線というのもあります。もっとも身近な事例は壁紙です。汚れにくく、汚れても掃除が楽なビニールクロスは、建築費のコストを考えても、大人が選ぶ素材であるといえます。しかし、子ども目線で見れば、無味乾燥なものにしか見えません。昔の家の板の木目には、同じ模様はなく、ところどころ節もありました。

その複雑な風景の中から、動物やもののけの顔を見つけ出して、想像力を養っています。もちろん汚れやシミも、想像力のネタになります。もし塗り壁の一部に、自分の手形でも残してあれば、それは子どもの脳内にも刻まれている手形になります。

いっそのこと、奥まった収納の一部は、子どもの落書きを残す壁にしても良いでしょう。子どもにとって、四角い空間よりも、○や△の方が刺激を感じます。小屋裏などの勾配天井が、子どもの想像力の源泉になります。低い天井部分と対比するように、高い天井部分が暗いと、そこは妖精の潜む場所になります。子ども部屋は、決して立派な南向きの空間にする必要はないのかもしれません。

階段も、大人にとっては踏面部(ふみづら)がよく見えますが、小さい子どもには階段は蹴上(けあげ)部分の方が目に入ります。階段の踏面を棚として考え、蹴上部に工夫をすれば子どもの目に止まります。本棚として作ってあげると、子どもの好奇心を育てるでしょう。

👥子ども動線

子どもが外から帰ってきて、最初にやるのは手洗いとうがいです。どんなに口を酸っぱく指示しても、習慣にならなければ、重ねて注意をするしかありません。家に帰った子どもの動線上に、洗面や靴脱ぎ、荷物置き場を設置することができれば、家が子どもの習慣を形成してくれます。

花粉を家の中に持ち込まない対策にもなります。同じ動線上に、家族との連絡ボードを設置しておけば、親とのコミュニケーションが取れ、登校するときに忘れ物をしなくなります。また、学校から帰って来て、子ども部屋との間を行き来するより、そのままリビング周りで学習する子どもの動線を考えておくと、子どもの成績も向上するでしょう。

子どもが小さいうちは、自分の部屋で勉強するよりも、家族が集まる場所で勉強する方が効率が上がります。ちょっと分からないことがあっても、近くにいる家族にすぐに教えてもらうことができるのが利点です。さらに、人の集中力は、通常15分程度といわれています。子どもならなおさら短くなります。ですから、子ども番組の多くは10分程度で区切られています。

そのため、子どもが個室で集中するは難しく、むしろ日常の生活の中で寸断されながら学習する方が、集中力を養うことができるようになります。また、小学校の先生方の調査にも、面白い法則性がありました。ダイニングテーブルの椅子を、使用後、自分でテーブルの下に戻すことがきちんとできる子どもは、学校の成績も良いというのです。学校の中でのふるまいでも、先生は観察ができます。

こうした行動を習慣にするのには、ダイニングでの普段の椅子の使い方でしつけなければできないことです。また、リビングの片隅に畳コーナーがあるのは、睡眠周期が短い子どもにとっては、格好の昼寝の場所になります。

👥扉の開閉に親の許可

子どもも少し成長すると、自分の城としての部屋を求めます。この時、北米の家庭で進められている親子のルールは、日本人も積極的に取り入れた方が良いと思います。それは、子ども部屋の入口戸の開閉の権利は、親にあるという約束です。

あくまでも、子ども部屋は親からの借り物であり、子どもは使わせてもらっているという立場になります。たとえば、友だちが来て、自分の部屋で遊ぶときにも、扉を閉めたいときには、親の許可が要ります。「1時間だけね」と、親が許してはじめて、子ども部屋の扉を閉めることができます。

自分の世界に浸ることのできる個室は、暮らしているだけで独立心を養います。鍵など「かけたら、なおさら自分の領域ができあがってしまいます。そんな個室の危うさを知ってか、扉の開閉は子どもが自分で判断できないものとすることで、躾(しつけ)で協調心を育てるよう、バランスをとっていると考えられます。

子どもの能力は、親の影響はもちろんのこと、住まい環境の影響を大きく受けながら、伸ばされてゆきます。子どもの成長を願うからこそ、より良い環境を与えてあげたいものです。

📚追記

今回の144号のテーマは【子供のための環境づくり】の題して『住まいは巣まい』でした。

松田妙子女史が『家をつくって子を失う』という著書で警鐘を鳴らされてから20年にもなります。当時は中流社会で子供部屋を作るのがステータスでした。

家をつくって子を失う

📚四十万靖さんが渡邊朗子さんとの共著
『頭のよい子が育つ家』を出版されたのが2006年8月。

頭のよい子が育つ家

この本は有名中学校に合格した自宅を徹底調査して生まれた著書でベストセラーになっています。これらの書籍は我々工務店にも大きく影響しました。

最近の住宅プランでは、子供が勉強するのはリビングが定着してきたようです。子供部屋(主に寝るための)が二階にある場合の階段はリビングに設えるのも常識の感があります。

子どもを中心に家を考えるのは世界共通のようですが家のプランニングは本当に難しいです。

幼児の時は両親と川の字で寝て・・・
小学校での宿題はダイニングテーブル・・・
受験期は塾や図書館・・・
思春期後半ではマイルーム・・・
結婚して巣だった後の部屋は???

ニルバホームが考える家は独立して子どもたちが新妻と愛児を連れて『ただいま!』っと帰ってくる実家の家にしたいなあ・・・と思っています。

そのためには傷がついても、それが勲章になるような自然素材の無垢の家が、やっぱり、いいですね。

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