おうちの話

高さをデザインするおうちのはなし177

空間を豊かにする高さとは?高さをデザインする

・マドリだけではわからない
・吹き抜けのある家
・低さのデザイン

新しい生活をイメージする時に、やっぱり気になるのはマドリではないでしょうか。今すぐ建てるのではなくても、こんなマドリで暮らしたら、どんな生活になるのだろうかと、イメージを膨らませているだけでも楽しくなります。でも、豊かな空間を生み出すためには、上手に高さをデザインすることが大切です。

🏡マドリだけではわからない

新しい家を考える時に、今のIT社会ではとても楽しみが多くなりました。インターネットを使ってさまざまなインテリアデザインを見ることができます。

「Pinterest」や「houzz」などの、サイトで、好きな写真をたどって眺めてゆくだけでも、楽しみは尽きません。そしていよいよ、夢は広がり期待感も膨らみます。

小紙「おうちのはなし」で、インテリアコーディネートレシピを記載している『すまレピ』では、インテリアのイメージだけではなく、レシピとして、さまざまなインテリアアイテムの情報を教えてくれます。

好きなインテリアを見つけたら、それをどのように実現できるか参考になります。でも、意外と難しいのは、こうしたイメージと現実の空間の設計を一致させることです。そのためにはマドリを見て、空間がしっかりイメージできなければ、とても実現することはできません。

ただ、マドリというと、気になるのは自分の使い勝手に合っているかということではないでしょうか。でも使い勝手はいかにプロフェッショナルであっても難しいことです。自分の生活は、暮らしている自分自身にまさるプロフェッショナルはいません。

そして縮尺されたマドリをみて、イメージをつかむのに、日本人なら、6畳間とか4畳半というだけで、なんとなく広さもわかります。立って半畳、寝て一畳という広さの感覚はとても役立ちます。その感覚で、初めて見る間取りでも、それなりにイメージできるのではないでしょうか。

もちろんプロのデザイナーは、それ以上に空間感覚を把握していることは当然のことです。人一人が通る寸法とか、すれ違うことができる空きとか、荷物をもって移動できるという寸法を、実際の設計の中で数多く経験しながら、空間の感覚を体得しています。

しかし、じつは同じマドリで、同じインテリアアイテムを置いても、たとえばサイトで見た憧れの空間と一緒になるとは限りません。たとえばマドリに描かれている窓が、通常の腰窓か掃出し窓かによってインテリアも外観も大きく変わってしまいます。

さらには、地窓や高窓という選択もあります。高窓であれば、たとえマドリに窓が描かれていても、収納棚やローボードを置くことができます。地窓であっても、壁掛けのテレビを設置することもできます。

プロのデザイナーは、高さの感覚をつかんで空間をイメージしています。そして、豊かさを感じる空間をつくり上げるのには、高さのデザインがとても大切なのです。

🏡天井の高い家

ヨーロッパが舞台の映画を見ていて、立派な家のシーンに驚かされることはありませんか。人の大きさに比べて、高い窓が背景になっているシーンをよく見かけます。日本の家の窓は低く、障子があって横に広がる窓です。

一方、ヨーロッパの窓は縦長で、とても手が届かないのではないかと思うほど高いところまでガラスが嵌められています。これだけの高い窓があるということは、もちろん室内の天井も高くなっています。

実際に西洋化が進み、次々と建てられた日本の洋館では、1階の天井高は3.4mから3.7mもあります。社寺では仏像の設置などに天井を高くすることはありましたが、住宅としては珍しく、おそらく当時の人にとっては、西洋の畏敬を感じたことでしょう。

たとえば、もし建築予算に余裕があったら、何を求めますか?東京オリンピックへの建設や消費税、そして景気の動向などで、住宅の建設費は上昇しつつあります。その半動で、じつは建てられる住宅の面積は減少しています。

つまり、予算に合わせて広さを抑えているということです。それを考えると、もし建築予算に余裕があったら少しでも広くしたいのではないでしょうか。でも、意外なことに、日本の持家住宅のデータでは、日本はイギリスやフランスよりも広く、ドイツとは1坪ほどの差しかありません。

つまり日本の住宅の広さは、充足されているといっても良いのです。でも現実に日本よりも狭い持家に、住んでいるヨーロッパの住宅や暮らしに豊かさが足りないとは私たちは感じません。

豊かさの指標は広さだけではないのです。ヨーロッパの映画のシーンを見れば、その豊かさを感じる要因のひとつが天井の高さと思えてきます。もし、予算が許されたら、ちょっと天井を高くするのも良いかもしれません。

🏡吹抜のある家

天井が高い豊かな空間といえば、真っ先にイメージされるのは吹抜けではないでしょうか。その吹抜けにもいろいろあります。言葉の通りに、単純に2階の部屋の床を抜いた吹抜けが代表です。

吹抜けにすると熱が上に逃げて、寒いのではないかと心配する人もいます。でも、現代の家では、しっかりと断熱を高めれば、昔の家とは違い心配もいらなくなりました。さらには、気密性を高めて、空気の流れをコントロールすれば、建物全館に冷暖房を届かせることもできます。

その時には、吹き抜けがある方が、熱が回りやすくなると考えられます。この吹き抜けには、屋根勾配を利用した吹抜けもあります。平屋や2階の天井を、屋根の勾配に合わせて斜めにして天井を高くします。

その例は、たとえばロフトスタイルです。やはり映画などで、屋根裏のようなロフト空間をリノベーションしてアトリエにしている事例を見かけます。

もし吹抜け勾配天井として利用しなければ、天井裏という使わない空間になってしまいます。家の空間を最大限に活用することは、豊かな空間づくりのポイントです。

🏡デザインの高天井

吹抜ではなく、洋館のように階高を上げて、わざわざ天井を高くするのは、まさに豊かさをデザインしているものです。じつは、日本の家は天井が低い印象がありますが、日本の家も天井が高い方ほど格式があります。

そもそも、母屋から庇を出して縁側をつくっていたので、母屋の階高は意外と高かったのです。そして伝統的な書院造では、上座敷には格子天井を組み、下座敷よりも天井を高くするのが伝統の造りです。

洋館のように3mを超える高天井は、人間の視野角の中に自然と天井が見える程度の高さになっています。吹抜のように見上げなければ見えない天井とは違い、落ち着きや安心感を与えてくれます。

🏡低さのデザイン

しかし、居室以外の狭い空間で高い天井があっても無駄です。上手に空間を使いこなさなければできません。一方、高さをデザインするのは、高くするばかりではありません。

天井が低いからこそ、引き立てられる空間もあります。同じ日本の伝統の空間でも、茶室のように小間をつくるときには、通常の天井高でもプロポーションが高く感じてしまいます。

さらに狭くなっていることで、視野角の広がりも抑えられてしまいます。そのためには、天井を低くする方が落ち着いた空間になるのです。たとえば、玄関のデザインには天井の高さを活かすことを考えたいものです。

玄関は、家の顔であり人を出迎える重要な場です。しっかりとスペースをとって迎えるのであれば、天井を高くして、あるいは吹き抜けにしてデザインします。玄関先から見た印象よりも、玄関に入った時に大きな広がりを感じられるようになります。

あるいは、逆に玄関は茶室の闘り口のようにデザインします。広さは必要なく、できれば天井も低くして、少し光も足りない程度の暗さを演出します。その低い天井の玄関から、居室に入った時に天井が高いと、一気に開放感を感じることができます。決して天井が高いことだけが、豊かではないのです。

同様に、たとえばリビングダイニングなどの空間でも、高い天井のリビングがあれば、隣り合ったダイニングは多少天井が低い方がより変化を感じられます。一般的な住宅の天井高は、最近では2.4mより高くなって、2.5mほどとなっています。

一方、サッシの寸法も、天井高と同じ2.4mの高さまでバリエーションが揃えられています。たとえばダイニングの天井高を2.4mに抑えれば、床から天井までびったりと収まった窓をデザインできます。法的な居室の天井高さは2.1m以上と定められています。デザインはその範囲の中で、自由に発想すれば良いのです。

また、高さの規制が厳しい地域では、敷地を有効に使おうと思うと、特に2階の階高を抑える必要もあります。2階にある寝室で、たとえ天井高を抑えて設計しても、高窓の位置を天井と揃えれば、空も見えて天井の低さを忘れさせてくれます。

それだけではなく、建物の大きさにもよりますが、コンパクトな家であればあるほど、2階の階高を抑えた方が、外観デ「ザインも安定して感じられます。

住宅のデザイナーは、こうした高さをデザインして形に変えています。マドリを読み解く時には、階段や段差に注意して高さのデザインを見抜いてください。設計士の腕は、高さの設計にかかっているといっても過言ではないでしょう。

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