おうちの話

木造建築の時代おうちのはなし185

鉄やコンクリートより優れた木材木造建築の時代

・木材の強さとは
・木を愛し、木を恐れる
・木造建築の時代

「木は燃えるもの。木は腐るもの。鉄やコンクリートより弱いもの」と思っている人は多いと思います。ノートルダム寺院の木造屋根は焼け落ちたのを知り、木材が腐ったり白に食べられたりしている話しも聞きます。

そんな木を使って、命を守る家を建てるのはちょっと不安になります。でも、木材は人類の知恵を集めても足りないほど、自然が生み出した優れた材料なのです。

🌳強さの思考実験

鉄やコンクリートよりも木材は弱いというイメージがあります。地震にしても、火災でも鉄骨造やコンクリート造より木造は不安ではないでしょうか。そこで強度について、頭の中で想像して比較の実験をしてみましょう。

たとえば、長さ1mくらいの鉄と木の棒をイメージしてみてください。この2本の棒を、叩き合わせてみたり、押し合ったりするのを想像してみましょう。現実の実験をしなくても答えは明白で、鉄の棒には傷ひとつできませんが、木の棒は折れてしまうでしょう。

圧倒的に、鉄の方が木よりも強いというイメージは誰もが持っています。同じように地震の大きな力が加わった時には、鉄骨の建物の方が強いと考えるのが普通のことです。でも、1mの木の棒に比べて、鉄の棒には振り回すのも大変な重さがあります。それだけ重さが違えば、比較にならないのかもしれません。

実際に地震の力というのは、建物の重さが重いほど大きくなり、軽いと弱くなります。どんな建物に対しても地面が一気に動くので、それについてゆこうとする、慣性の力が働くのです。ですから重たい鉄骨造よりも、軽い木造の方が地震力は小さくなるのです。

そうであれば、たとえば鉄と木の棒も、同じくらいの重さの棒で考えてみることにしましょう。木や鉄にも種類がありますので、まずは一般的な鉄とスギで比べてみます。それぞれの比重を調べると、木に対して鉄は20倍も重たくなります。

たとえば木の棒は、ちょっと太めの手すりの太さである直径4cmほどの棒にしてみましょう。これなら重さ500gほどで、片手で振り回すことができます。まったく同じ太さの鉄の棒なら重さは10kgにもなります。普通の人では両手で振り回すのも大変な重さです。

これを、木と同じ重さの鉄の棒にすると、直径は9mmほどの細い鉄棒になります。同じ重さですから振り回すのも楽になりますが、ちょっと振り回しだけでも曲りそうです。これらを押し合えば、木の棒と鉄の棒の強さのイメージは逆転します。

でも、細い棒は曲がりやすいので、この思考実験ではちょっと鉄にかわいそうです。軽くするためにはもう一つの方法があります。手すりと同じサイズのままで、パイプのような中空の形にするのです。見た目も同じように見えるので良さそうです。

同じ重さにするためにはパイプの鉄の厚さは0.5mmほどの薄さにしなければなりません。この軽い鉄パイプを、木の棒とぶつけ合わせたらどうなるでしょうか。木の棒も無傷ではすまないかもしれませんが、鉄の棒がへこむのも間違いありません。

さらに、強度を比較してみると、20倍の重さの比に対して、引張ってちぎれる強度は約4倍、圧縮して潰れる強度は約10倍程度です。この数値から想像すると、思考実験の結果は明瞭で、木の棒の方が強いのです。

🌳木を愛し、木を恐れる

じつは近年、木から生まれた最新技術があります。木の強さの成分であるセルロースからつくられた新素材は、鉄の5分の1の軽さで、強度は鋼鉄の5倍あります。

セルロースナノファイバーのような先端技術は日本の得意とするところです。加えて、世界最古の木造建築である法隆寺や、姫路城などの世界遺産を有しているのも、日本です。西洋の石の文化に対して、日本は木の文化であるといわれるように、木を大切にしてきた伝統があります。

ところが、じつは現代の日本が先進国の中でも、木造建築では遅れている国であるという現実を知ると驚きます。関東大震災や太平洋戦争による、木造建築物の火災による私大な被害の経験から、木造建築を避ける時代が長くありました。木を愛することと同等に、木を恐れる気持ちも培われたのです。

全国で建替えられた小中学校のほとんどが、鉄筋コンクリート造になったことが、その象徴です。木材が不足していた事情もありますが、避難所にもなる大事な施設には耐火建築物であることが求められたのです。ところが、この耐火性についても、世界では新しい知見が広がりつつあります。

確かに木材を火中に投じれば、勢いよく燃え出し最後は灰になってしまいます。鉄やコンクリートは簡単に燃えません。

🌳火に強い鉄、熱に強い木

耐火に対する性能は、国際規格の耐火試験(ISO834)で、1時間、2時間、3時間耐火という時間の単位で定められています。火災時に、時間とともに加熱されてゆく温度を標準加熱曲線として定め、その温度に耐えられるか否かが基準になります。

この標準加熱曲線の、2~5分後の温度である400~500度に着目します。この温度では、木材は発火点に到達します。発火点は近くに火種がなくても燃え始める温度です。木材は火災と同時にえ出すと考えて間違いありません。一方、鉄は燃えることはまずありません。

さらに溶けて流れ出す温度である融点は約1500度で、標準加熱曲線では3時間経っても達する温度ではありません。しかし500度に達すると、鉄の強度は半分ほどになってしまいます。そして10分程度で、ほとんど強度がなくなってしまいます。

悲惨な現場となってしまった京アニの現場風景を見ても、火災を広げたと思われる螺旋階段は、熱と自重で歪んでしまっています。鉄は熱に対してとても弱いのです。ですから鉄骨造では、火災への対応のため耐火被覆を欠かすことはできません。

木が熱に強いのは、主成分で、あるセルロースがとても熱に強いからです。さらに、木は燃えると炭になります。その炭はある種のセラミックのようなもので、急激には燃えなくなり、その上、内部に熱を伝えにくくします。

つまり、木は相応の厚さがあれば芯の部分は燃え残り、強度を維持できるのです。崩れ落ちてしまう鉄骨造とは大きく違います。逆に熱に弱い鉄骨造の耐火被覆として、木材を張っている事例があるほどです。

現実にアメリカでは、写真のような中層住宅群が木造で建設されています。こうした木の熱や火災に対する強さが認められて、身近なところで幼稚園や小学校、そして介護施設等が建てられはじめています。

🌳木の長期耐用

強度や火災だけではなく、じつは耐久性でも木は優秀な材です。木は腐ってしまう心配がある一方、100年を超えて残されている事例も数え切れません。その代表は、約1400年前に建てられ現存する世界遺産となった法隆寺です。

そればかりか、縄文時代の遺跡である三内丸山遺跡からは数千年前の柱が地中で腐らずに残っていました。それに比べると、世界最古の鉄骨造であるイギリスのアイアンブリッジでも、建造から240年ほどであり、鉄筋コンクリートの建物はわずか120年ほどの歴史しかないと知ると、逆に鉄骨やコンクリートが心配にもなります。

そもそも、木材が簡単に腐ってしまうものであれば、これほど繁殖して大きな森をつくってきたはずもありません。地球という環境の中で進化してきた生物としての、生存戦略の中に腐らない構造をつくり上げてきたのです。

もともとは、空気中にはわずか0.04%しかない二酸化炭素から炭素を抽出して、水の水素と酸素と合わせて光合成で化合物を形成しているものです。これまでにも役立ってきたセルロースの他に、およそ20%を占めるリグニンを生成することで、樹木は耐久性を獲得しました。

木材の中心部が赤味を帯びているのは、この成分が多く含まれているためです。一部の微生物を除いては、このリグニンを分解することはできません。もちろん水分量などの条件によっては、こうした微生物も働き、時間をかけて腐食することもあります。

でも、鉄も錆び、コンクリートも細かいひび割れや、侵入した水分が凍結を繰り返すことで劣化します。近年になって、高度成長時代に急速に建設されてきた橋梁やトンネルなどの劣化が問題になっています。

わずか半世紀ほどのことですが、大規模な修繕を進めなければ、維持できないのが鉄骨とコンクリートの現実です。

🌳ティンバライズの時代

その上、木は地球環境にも貢献できる材です。戦後の植林から70年を経て、日本の山には多くの木材資源が蓄積されました。そこで林野庁が中心となり、2010年には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。

2020年の東京オリンピックのメインスタジアムである新国立競技場にも木が使われています。それは日本らしさではなく、世界に共通しているデザインなのです。地球環境としては、新しく二酸化炭素の吸収率を高めるために、木材を使用して植えかえることも大事です。

せっかく空気中の二酸化炭素を蓄えた木を、建築物として使うことは、他のどのような使い方よりも長く貯蔵することにつながります。さらに、鉄やコンクリートを使うためには、高温で精錬したり、焼成したりする必要があり、木を利用することに比べれば、数倍の石油や石炭のエネルギーを必要とします。

この点でも木は、地球環境に貢献する材料なのです。日本もようやく、世界に並ぶ木造建築の時代が訪れようとしています。ティンバライズ”は、その活動のキーワードです。住宅も、現代の選択肢の中では、鉄骨造やコンクリート造の家もあります。

もちろん日本では、圧倒的に木造住宅が多いのも事実です。身近なところに、木造建築物を見かけたら、ちょっと触れて木材の価値を感じてみてください。

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