おうちの話

日本人の家おうちのはなし192

私たちの住んでいる家とは?日本人の家

・日本人の家のイメージ
・清潔な家
・シンプル・ライフ

ラグビーワールドカップに続いて、2020年には東京オリンピックで、日本にたくさんの外国人観光客が来ることになります。政府が発表している目標数は4000万人の数が増えるに連れて、人気のある観光地から、日本人にも知られていない地方の穴場にも訪れています。

さらに、ホテルだけではなく民泊も含めて、多くの外国人が日本の生活風景を垣間見ることになります。あらためて、私たち日本人の住んでいる家とは、どんな家なのでしょうか。

🏡日本人の家のイメージ

最初に、この家をどう思いますか?

見るだけで、このインテリアが日本らしいデザインであることは、分かります。天井や畳の床、そして障子や座卓など、私たち日本人の生活をイメージするアイテムにあふれています。

ところで、このような家に住みたいと思いますか。そして、自分たち日本人の理想の家と思いますか。そうだと同意する人もいるでしょうが、ちょっと違うと感じる人も少なくないでしょう。

じつは、この写真は政府観光局が、外国人観光客に日本の魅力を伝えるために、掲載していたものです。世界に知れている技術先進国である日本人は、先端技術と共にこのような生活をしていると思われていても不思議ではありません。

そして日本への旅行で、豊かで文化的な生活をしているところが見られると期待していることでしょう。だからこそ地方の民泊や、古民家などを改修したゲストハウスに人気が集まっています。一方、現実に日本に住んでいる私たち日本人の家はどうなっているでしょうか。

もしくは、私たちはどのような家を理想と感じているのでしょうか。たとえば、写真のような和室をつくる人は減りつつあり、それ以上に和室をほんとうに使いこなしている人も多くありません。新築をした517軒の家庭のデータから、この傾向が見えてきます。

同じ家庭でのデータですが、家全体の質問に変わると結果は大きく違います。このような状況を知ると、和室が無くても日本人が家の中の生活を楽しんでいる風景は想像できます。

和室だけが日本人の暮らしを代表するものではありません。そして、家は住みながらこそ、楽しむべきものです。それだけに、本来であれば二十四節気を飾る和室の床の間が、現代の日本の家の生活シーンからは外されつつあることを痛感します。もちろん、それでも和室や床の間が完全に無くなっているわけではありません。

とりあえず余裕があれば、和室を作っておきたいという思いは根強く残されていることも分かります。しかし、残念ながら和室を使いこなす生活の知恵は失われつつあるようです。それだけに現代の日本人の家はこうしたイメージとは違うものになっています。

🏡ほんとうの日本の生活

現代の日本人の家は、現実に建てられている家を見れば分かります。たとえば主寝室と子ども部屋がある、個室の家がほとんどです。日本の伝統的な住居には、本来は個室はありませんでした。その意味では、すでに西洋化、あるいは現代化された家族関係が前提となっています。

そして和室が特別な部屋になって、逆にほとんどの家にはあたりまえのようにリビングがあります。しかし、西洋の独立し、たリビングではなく、8割を超える家庭でダイニングと一体になっています。そして、リビングが生活の中心になっていることも分かります。

同じように、寝室の形態を調べても、ベッドで就寝している人は約6割に及びます。映画やドラマで見る家族の風景も、リビングで過ごしベッドで寝る、このような風景がほとんどです。その意味では、外国人観光客が一般的な日本の家庭を訪問したとしても、自国の生活とあまり変わらないと感じるのかも知れません。

それでも、見方によっては、4割もの人が布団を敷いて寝ていることは意外かも知れません。似たようなことが、やはりリビングにも見ることができます。リビングにソファがあれば、そこに座って生活するのが当たり前のように感じますが、そのソファなどの応接セットを置いていない家庭が3分の1もあり、さらにはソファに座らず背もたれにしている家庭が同じように3分の1あるのです。

リビングやダイニングという部屋のカタチは変わらないのかも知れませんが、日本人の家ではイス座ではなく床座で生活することが残されているのです。その根底となっているのは、上足の文化です。

🏡清潔な家

外国人旅行者への案内でも、日本人の家では靴を脱いで家に上がることが注意されています。そのために、玄関には上がりがあって家の内外の床を仕切っています。そして脱いだ下足を収納するための下足入れも用意されています。

外を歩き回って付着しているであろう泥や埃を、家の中に持ち込むことも少なく、清潔な家を保つためには必須となる玄関です。だからこそ家の中でイスに座るのではなく直接床に座る生活が可能になります。座るだけではなく、寝転んで寛ぐこともできます。

また、下足を脱いで、スリッパに履き替えることも日本人の家の風習のひとつです。日本のスリッパという風習は、下足を脱がないで靴の上から履く室内履きから始まったものです。今では、を脱いでスリッパに履きかえますが、外国人にしてみると、人の靴を履かされているように感じて不快に思う人もいるようです。

そのスリッパでも、畳の上に登る時には、脱いでから上がります。上足のフローリングよりも、畳はさらに神聖で清らかな空間として意識しているということです。その他にも、清潔感に関わる感覚は、日本人の住まい文化の中にはたくさん残されています。

食事で箸を使うことも、西欧のスプーンやナイフの歴史よりもずっと古くからの風習です。トイレに洗浄機能がついているのも、日本では今やほぼ100%となりました。これも清潔感の現れです。そしてトイレと浴室が分かれて別部屋となっているのも、あらためて日本人の家だからこそです。

浴室も、浴槽に溜めた湯に浸かるというのは、日本人の家の特徴です。もちろん今ではシャワーも兼備されていますが、洗うためというよりも、上がり湯として流す意味合いの方が強い人も多いかと思います。日本の入浴の風習についても、古くは15世紀の大航海時代に日本を訪れた西欧人が書き記しています。

1週間に1度程度の頻度である西欧人と比べて、日本人は毎日のように入浴する風習があるということに、驚いていたのです。湯に浸かっている時は、汗を流し清潔になり、リラックスして免疫力が向上し健康の素になります。そして、不思議と湯の中ではプラス思考の発想をするものです。

その日1日の反省をし、脳が活性化して新しいアイデアも浮かびます。お風呂は日本人の活力の源といっても過言ではないはずです。その意味では、浴室こそもっと日本人らしさを凝らして、こだわりを持った空間にしても良いのかも知れません。

🏡モノに溢れた家

一方、洗浄便座を始めとして、日本人の家はたくさんのモノに溢れています。技術先進国らしく、さまざまな家電製品がしのぎを削るように揃えられています。

テレビには録画装置や音響装置、FAX等の通信機器、さらにキッチンには炊飯器を始めとして、さまざまな調理器具があるのも普通です。その上、たとえば食事に合わせて、食器の種類を変えて食事を楽しむことも多く、世界の家庭に比べても食器類の数も多くあります。

家の中にあるものをすべて庭先に出したとしたら、間違いなく日本人の家は世界トップクラスのモノ持ちであろうと思います。床座の生活が続けば、ソファの他にコタツを置き、クローゼットをつくってもタンスや収納家具を取り揃えています。

清潔感とは正反対に、日本人の家はちょっと気を緩めるとモノであふれた雑多な家になってしまいます。米のインテリアと比べても、どこか垢抜けしないのはこうしたモノに囲まれた暮らしになっているからです。それでもどうにかしたいと考えているようです。

🏡シンプル・ライフ

冒頭の伝統的な日本の家の写真のように、日本人の家にある清潔感は、そのままシンプルなインテリアと重なります。しかし、シンプルだからこそ生活感のないインテリアにするのは、現実の生活を考えると大変な努力が要ります。

どうしても生活するために必要なモノが、あちらこちらに置かれてしまうのです。特に子どもがいれば、成長とともに必要なものが増えるばかりです。もちろん、モノを減らしてゆくのがいちばん大事なことですが、なかなか手放せないモノもあります。

こうした中で、シンプルなインテリアを可能にするには、収納計画が欠かせません。伝統的な日本の家には、納戸という収納空間が欠かせませんでした。表に飾る以上に納戸に収納している調度品の品揃えがなければ、季節に合わせた室礼を実現することもできません。

古い時代以上にモノに溢れた現代でこそ、同じ納戸を使いこなさなければ雑多な家を回避する手立てはありません。そして、納戸からの出し入れを面倒と思わないことが、日本人の家らしい豊かな暮らしにつながります。

今回の「おうちのはなし」の最初に示した床の間とその掛け軸のデータを見直し、飾りっぱなしではなく、季節やイベント・来客に合わせて、室礼にこだわることこそ日本人の家に通じているのではないでしょうか。清潔さと合わせておもてなしの心が、外国人旅行者にとって観光地とは違う感動を与えてくれるキッカケになるはずです。

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