おうちの話

平屋という贅沢おうちのはなし195

小さな空間にある大きな豊かさ平屋という贅沢

・魅力ある家
・平屋だから得すること
・平屋の注意ポイント

住宅の構造躯体を生産しているプレカット会社に取材をすると、近年の意外な傾向を聞くことができました。それは、平屋が増えているということです。

確かにどこの住宅メーカーでも、平屋の商品を揃えています。昔から、究極の贅沢といわれている平屋の魅力とはどんな生活にあるのでしょうか。

魅力ある家

平屋といえば階段もなく、バリアフリーであることから高齢者の家のように感じることがあります。あるいは昔の古臭い家のようにも思えます。反面、贅沢な家、理想の家として紹介されることも少なくありません。

理想の家であれば、たとえば子育ての世代が暮らしても、住みやすい家であるはずです。実際に平家を建てて暮らしている若い世代も増え、少しずつ平屋の魅力が再認識されつつあるようです。

なによりも平屋が贅沢な家であるのは、大きな敷地がなければ叶えられないということにあります。土地の価格が高い都市部では、それだけでも大きな予算を必要としますが、それでも平屋を選ぶ人が増えているといいます。

単純な家の中だけのことを考えれば、マンションなどの共同住宅も平屋と同じです。玄関から家の中に入れば、すべての部屋に階段を使わずに入れます。そのように考えると、平屋の家がマンションと大きく違う点は、バルコニーに出る感覚ではなく、自分の土地と強くつながっていることだといえます。

それはまさに、土地付き戸建て住宅の魅力そのものです。そして、わざわざ平屋を選ぶことは、大地とのつながり方を2階建ての住まい以上に感じようとしているのだといえます。

庭の贅沢

たとえば、リビング・ダイニングの掃出し窓から外に出ればウッドデッキがあって、庭の一部をくつろぎの空間にします。でもそれは、多くの2階建の家であっても同じことです。

平屋の家では、リビング・ダイニングだけではなく、寝室や子ども部屋からも同じように庭に出ることができます。その意味では、プライベートな庭がある家と考えることもできます。もちろん、ユーティリティスペースからも庭に出ることができ、物干しなど、庭にもユーティリティができます。

庭という贅沢を存分に味わうことができるのが、平屋の家ということです。そのためには、平屋に適した土地が必要です。特に日当たりと風通しの良い土地は、平屋に適した土地です。でも、よく考えてみれば、平屋に適していない土地では、たとえ2階建てにしても日当たりと風通しは、1階よりも2階の方が良いはずです。

リビング・ダイニングを2階にでもしない限り、休日にのんびりした昼を過ごす居室は難しいかも知れません。これはつまり、平屋が建てられる贅沢は、そのまま贅沢な土地であるということになります。そして土地を庭にして味わうという贅沢にも通じています。

多くの人が、平屋を理想の家と考えている原点はここにあるのかもしれません。たとえばペットがいれば、動物たちにとっても、庭を含めて2階建以上に自由に闊歩できる場所は増えます。庭に草木を植えれば、子ども達も生き物の命の大切さを学ぶ機会になります。

プライベートな庭を与えることができればなおさらです。平屋の魅力を、改めて考えてみましょう。

平屋は強い

平屋の家は決して新しいものではありません。むしろ、昔には標準的な家でした。間違いなく人が家を建て始めた最初の家は、平屋であったに違いありません。ですから、世界中に平屋の家が建っています。そしてなによりも、平屋はとても単純な建て方で建てられます。

それは構造的な強度でも明白です。構造の計算を確認しなくても、平屋が直感的に強いことは、多くの人が感じていることでしょう。実際に現代の耐震住宅では、地震による水平力を耐えるために、耐力壁といわれる丈夫な壁の長さの基準が決められています。

床面積1㎞あたりに何cm相当の壁をつくるかを定めたもので、2階建の住宅の1階部分と比べれば、半分以下の長さでよいことがわかります。たとえ大きなリビング・ダイニング空間を作っても、その周囲にプライベート空間が配置されていれば、必然的に間仕切り壁が必要になります。

この壁を耐力壁にすれば十分な長さが取れるのです。地震と同じように、風の強度基準もあります。風の力は、高くなるほど強く当たるものと考えられて、1階の柱の半分から上の、見附面積で計算します。当然、平屋が有利であることは、素人でも察することができると思います。

異常気象で台風の大きさと頻度も増し、地震列島の日本に建っている以上、地震風に対する強度の心配をしないわけにはいきません。でも平屋であれば、心配をする必要はなさそうです。

また、風の心配がないのであれば、通常の2階建てよりも軒を延ばしても安心できます。掃き出し窓にすることで晒される床を守ることができると同時に、外観デザインの印象を大きく変えてくれるでしょう。

平屋のデザイン

平屋のデザイン面でも、構造強度が大きく影響します。耐力壁の長さが半分ですむのであれば、それだけ窓を大きくすることができるのです。日本の伝統的な縁側のように、掃出し窓を並べてより庭とのつながりを活かした家にすることも可能です。

地面に近いだけに暗い印象のある平屋ですが、これによって逆に明るい家にすることができます。外観デザインはもちろんのこと、インテリアデザインにも大きな影響を与え、豊かな空間を演出できるでしょう。さらに、2階が載らないので、平屋では高さにも自由が生まれます。

もっとも単純な活用法は、屋根勾配に合わせて天井にも勾配をつけると、天井高は3~4mにすることができます。平屋なのに吹抜のある空間になります。この高さを活かして、屋根の棟に近い部分では、床の高さを上げてスキップにすることも、魅力あるアイデアのひとつです。

床が高くなった分、基礎空間と一緒に収納スペースにします。こうした床下収納空間は、西欧ではポニーウォールと呼ばれ、建築に使った建材の残りを保存して、将来の修繕に備えているのです。もちろん、一般的な収納として利用します。その他に、小屋裏空間に大きな収納を確保することもできます。

収納部の天井高さが1.4m以内であれば、1階床面積の2分の1の広さまで確保できます。伝統的な日本住宅にあった納戸を、こうした空間に設計すれば、現代ならではの平屋の暮らしをデザインすることができるのです。

平屋の得

こうした空間活用は、2階建てでもできないことはありませんが、平屋だからこそ得する面積の話もあります。階段が要らないことだけで、その面積分を使えるのです。たとえば、最低限の階段でも1坪ほどのスペースが必要になります。

この階段の面積は、1階と2階の両方で参入されます。つまり、2坪分もの面積が2階建てでは潰されてしまうのです。さらに、階段に踊り場があったり、階段に通じる通路部にもそれなりのスペースが必要であったり、階段部だけの面積では足りません。合わせれば3坪ほどの面積にもなります。

つまり、2階建てと比べて平屋の家は、同じ面積でも6畳一間分広い家になるのです。でも、階段はいわば廊下のようなもので、水平に広がった間取りに廊下があっては、せっかく得した面積を活かせません。現代流の広めのオープンなリビング・ダイニングを中心とすることで、平屋の得を活かせるデザインになります。

また、階段を使わない平屋の家は、掃除がしやすいという意見も多く寄せられています。階段の段板部分が掃除しにくいだけではなく、掃除用具を上げ下ろしする必要も無くなります。それ以上に、今や掃除機もロボットの時代になりました。

留守をする時に、すべての扉を開けておけば、ロボット掃除機1台で、全部屋の掃除が自動的に行われます。ロボットが自由に動き回れることは、そのままバリアフリーの家になっているということでもあります。平屋の得は意外なところにもあるものです。

平屋のコスト

かといって、平家が得することばかりではありません。平屋は贅沢な家といわれる理由のひとつに、建築コストで不利な面もあります。同じ床面積でも、基礎工事と屋根工事は多くかかります。

たとえば30坪の住宅であれば、平屋の基礎工事は30坪ですが、総2階であれば15坪の基礎工事ですんでしまいます。それとまったく同じことが、屋根工事でも考えられます。逆に外壁工事は、平屋の方が少なくてすみますが、開口部が大きくなる傾向にある平屋はサッシ工事でもコストアップになりがちです。

もちろん、単純な面積だけの比較ではすまない部分もあります。さらに、侵入箇所も増えるので防犯対策も、平屋の方が大変であるという意見もあります。しかし、現代流の平屋では、検討次第では逆転する要素もあります。

屋根面積が大きくてコストがかかるのであれば、太陽光発電を搭載すれば、それだけ大容量にすることができます。電力買取制度が始まって10年が経過し、買取価格も安くなり、売電価格の方が使うよりも安い時代になりました。

しかし、電力を使わない家はありません。災害時にも発電できて、さらに電力を蓄えて備える家になれば、安心も増します。もちろん、冷暖房を合わせた電気代がゼロ円の家にすることも可能です。実質的には、水道代だけで暮らせるようになると、ローン返済も楽になります。

こうしたコスト面のメリットも生かして、贅沢といわれる平屋の暮らしを検討してみてはいかがでしょうか。

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